人間関係

妻に感謝やねぎらいの言葉をかけない夫たち|その理由と良好な夫婦関係を築くために妻ができることは?

会話している男女
妻に感謝やねぎらいの言葉をかけない夫たちと良好な関係を築くには?(Ph/GettyImages)
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何かをしてあげても「ありがとう」の一言もなければ、ねぎらいの言葉もかけてくれない夫たち。こっちは大きなストレスを感じているのに、夫は何も気にしていない…。そんな不満をかかえている人は多いかもしれません。

そうしたズレから大きな亀裂を生まないために、良好な夫婦関係を作っていく方法を、ベストセラー『夫のトリセツ』(講談社)の著者で脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんに教えてもらいました。

【相談】
夫の実家は、徒歩10分の距離です。夫は毎週末、しかも土日続けて実家に行きのんびりするのが好きです。姑と私は仲がよいので基本的に私も一緒に行くのですが、毎週というのは疲れます。たまに「今日は家にいたい」と断ると夫は不機嫌に。こんな夫にはどう対応するのがよいのでしょうか。(53才・パート)

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「男性脳」「女性脳」に違いは?

男性の脳は、女性の脳に比べて、小脳の容積比率が大きいと言われています。

小脳は、空間認識と身体制御を司る場所。つまり、男性脳は、空間認知力(とっさに距離感を確かめたり、空間構成やもの構造を見抜いたりする能力)や、とっさに身をかわすような身体能力が高めに設定されているということです。

そりゃ、そうでしょう。何万年も狩りをしながら進化してきた男性脳だもの。荒野に出て、危険な目に遭いながら、自分と仲間を瞬時に救いつつ、確実に成果を出せる男性しか子孫を残してこれなかった長い歴史がある。多少は、こういう能力が高くなければね。

その代わり、目の前の者への観察力や、「ことのいきさつ」から真理を見出す能力は、男性脳全体に低め設定。こちらは、女性脳に高く設定されています。もちろん、男女とも、鍛えれば、どちらの能力もちゃんと使えます。それどころか、なんなら、後天的に手に入れた能力のほうが、意図的に安定して使えて、プロとしては優秀だったりするのです。

このため、「女性だから、空間認知力が低い」「男性だから、勘が鈍い」と決めつけるのは早計過ぎ。職能に関しては、性差を言われるいわれはありません。

ただ、日常のちょっとしたセンスで、この性差が効いてくることがあります。

例えば、妻を自分の身体の一部のように認知する癖。

「男性脳」は道具と馴染む

空間認知力と、身体制御の能力が高い脳は、道具を、自分の身体の拡張器官のように感じ取るセンスがあります。

家電を見ている夫婦
バイクや自動車が好きな男性は多い Ph/GettyImages
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例えば、バイクや自動車。バイク乗りは、またがったとたんに、バイクが自分の身体の一部のように感じると言います。車好きも同じこと。彼らはよく、タイヤが小石を踏んだとき、自分の足の裏で踏んだように感じる、と言ったりします。バイクを傾ける時も、自分の足裏を傾けたかのように、その角度に迷いがありません。

ナイフや工具も、あるいは万年筆も。自分の指の拡張のように、男性脳は、道具と馴染みます。だから、バイクを愛し、車を愛し、ナイフや工具や万年筆をコレクションして、悦に入るのでしょう。

息子が20歳のとき、「人生の記念になるようなものをプレゼントしたい。何が欲しい?」と聞いたら、「工具一式!」と答えました。「そんなもの?」と思ったけど、10万円は軽く超え、たしかに人生の記念になる値段だわ、と思ったのを覚えています。

「男性脳」の“身体拡張感覚”が妻を萎えさせる

男性脳は、愛してやまない道具たちと同じように、愛する妻を、自分の身体の一部のように感じます。それが男性脳にとって、馴染むことであり、愛着のかたちだから。

だから、道具のように、迷いなく便利に使うわけ。21世紀男子たちは、昔の男たちのように「飯、ふろ、寝る」しか言わないってことはないだろうけど、「お茶、淹れて」「タオル取って」くらいは言うのでは?

自分の右手を躊躇なく使うように、妻を躊躇なく使う。妻だって、新婚のときは、その遠慮のない一体感がうれしかったはずなのに、いつの間にかそれが勘に障っているわけですよね。「恋の賞味期限」が終わって。男性たちが不幸なのは、そのことに気づいていないことなのかも。

感謝もねぎらいもないのは愛がないわけではない

その上、この手の男子は、感謝もねぎらいもないのが一般的。

自分の一部なので、褒めることも、感謝することも、思いつかないからね。自分の心臓に、「毎日、ちゃんと動いてくれてありがとう」と言わないように。自分の右手に「こんなことができるなんて、すごいね」なんて言わないように。

もうおわかりですね。感謝もねぎらいもないのは、愛がないわけではなく、逆に、強い愛着があるからなんです。

感謝のことばの1つも言わない昭和男子は、妻に先立たれると、がっくりと弱って、ほどなく妻のところに行ってしまう人が多い。自分の一部を失ったのだから、きっと、私たち女性には想像もつかない喪失感があるのでしょう。

さて、優しいことばをくれて、家事もできる、一人でも生きていける夫と、武骨だけど妻の後を追う夫と、どちらの愛が深いのでしょうね。