イライラや神経過敏が増えて、もしかして更年期?と不安になることはありませんか? 女性がよりよく歳を重ねていけるよう“転ばぬ先の杖”を提供したいと語る、産婦人科医・高尾美穂さんの著書『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』(世界文化社)から、更年期の始まりについて学びます。
40歳を過ぎたら更年期の準備をすることが大切
「更年期は閉経の前後5年間を指しますが、実際に閉経してみないと自分がいつから更年期に入ったかはわかりません」と高尾さんは語ります。
「更年期の始まりは、最後の月経から5年逆算してわかるものです。日本人の平均的な閉経年齢は50歳~51歳の間で、個人差がありますから40歳を過ぎたら『もう更年期の不調もありえるかも?』と考えて準備しておくことが大切です」
更年期の始まりのサインは月経不順
更年期に入っていることを示すもっともわかりやすいサインは、月経周期の乱れだと高尾さんはいいます。
規則的だった月経が何か月もこなかったり、逆に半月くらいできたり、経血量が以前より増えたり減ったりと人によって乱れ方はさまざまなのだそうです。心あたりがある人は、そろそろ更年期の始まりかもしれません。
疲れや老化を感じ始めることも
月経不順のほか、若い頃にはあまり感じることのなかった疲れや老化を意識し始めるのも更年期に入ったサインなのだと高尾さんは語ります。
だるさや疲れやすさ、肩凝り、イライラ。以前より感情の起伏が激しくなったり、太りやすくなったりするなど、フィジカルとメンタルの両面で不安定になりがちなのだそうです。また、白髪や老眼の悩みが出てくるのもこの頃だといいます。
体、心、環境の変化が更年期症状を引き起こす要因
女性の40代は、人生の成熟期であり曲がり方でもあると高尾さんはいいます。
キャリアを積み重ねた人が体力の衰えで若い頃のように頑張りがきかなくなることもあるし、晩婚・晩産で出産した40代が、育児に邁進するケースも珍しくありません。一方で、子供が思春期に差しかかって反抗期を迎えたり、成長した子供が自立して夫婦2人だけの生活に戻る人もいます。親の介護が始まるケースもあるでしょう。
このような環境の変動が、更年期症状を引き起こす大きな要因なのだそうです。
自己犠牲型の人は更年期症状が強くなりやすい
環境の変動といえば、コロナ禍でのストレスも気になりますね。先が読めないこの時代は女性の心身にも少なからず影響を与えそうです。そんな中、気になるのは更年期症状の重さの個人差。その人の性格によって症状の出方の違いはあるのでしょうか?
「私がたくさんの患者さんと接して感じることは、女性は真面目でがんばり屋さんが多いということです」と高尾さんは語ります。家族のため、親のためなど、自分以外の人のために役に立ちたいという自己犠牲型の人は、更年期症状が強くなりがちなのだそうです。
更年期は棚卸しの時期
自己犠牲型の人という言葉に、「自分もそうかも!」と思い当たる人へ高尾さんはいいます。
「更年期はいままでの人生を振り返り、体調や人間関係の状態を確認する棚卸しの時期。丁寧に自分の体と向き合い、ケアしましょう」
がんばりすぎる傾向がある人は、この機会にもっと自分自身のために生きることを考えるとよさそうです。そして体の不調を感じたり、気になる症状がある人は婦人科に相談するといいでしょう。
◆教えてくれたのは:産婦人科専門医・高尾美穂さん
女性のための総合ヘルスクリニックイーク表参道副院長。医学博士。スポーツドクター。ヨガドクター。東京慈恵会医科大学院修了。同大学附属病院産婦人科助教を経て2013年より現職。「すべての女性によりよい未来を」をモットーに、医療・ヨガ・スポーツの3つの活動を通じ、専門的な知識をわかりやすく伝える啓蒙活動に精力的に取り組む。テレビや雑誌、イベントなどで幅広く活躍するほか、YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」を毎日更新。著書に『超かんたんヨガで若返りが止まらない』(世界文化社)など。https://www.mihotakao.jp/blog