寒さを感じるとトイレに行く回数が増えませんか? 頻尿が気になったら、食事の内容や生活習慣を見直してみましょう。そこで、頻尿の改善におすすめの生活習慣や食事で意識したい栄養素、頻尿に効果があるとされる漢方薬について、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんに教えてもらいました。
* * *
頻尿の症状と原因をチェック
「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を頻尿といいます。一般的には、起床から就寝までの排尿の回数が8回以上の場合を指します。頻尿には主に3つの原因があります。
水分の摂りすぎ
水分を摂りすぎたとき、体内に必要以上の水分をとどめておくと血圧の上昇やむくみなどが起こり、体に負担がかかるため、頻尿になる場合があります。
成人には、1日2.5リットル程度の水分が必要だといわれています。水分は食事からも摂れますし、体内でも合成されるため、飲料として必要なのは1.2リットル程度です。食事の内容や活動量、体調や気候によっても必要量は変わるので、都度の調整が必要になります。
冷え
尿をためる膀胱(ぼうこう)の働きは自律神経によって調整されています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が優位になると膀胱が収縮、副交感神経が優位になると弛緩します。
寒さを感じると交感神経が刺激され膀胱が収縮し、尿をためられる量が少なくなるため、頻繁にトイレに行かなければならない場合があります。
病気や薬の影響
過活動膀胱、膀胱炎、糖尿病などの病気が原因で頻尿になることもあります。また、血圧や腎臓などの薬のなかには利尿作用をもつものもあります。生活に支障が出るようであれば主治医に相談してみてください。ほかにも、加齢による体の衰えや不明な原因で頻尿になることも少なくありません。
頻尿を改善する生活のポイント
頻尿を改善するには「水分の出入りを把握すること」と「寒さ対策」が大切です。すぐにできる方法を2つご紹介します。
“排尿日記”をつける
口にした飲料の量と、排尿した時刻を数日間記録します。記録をつけることで、午前中に水分を摂ることが多い、仕事中にトイレに行く頻度が高いなど、自分の傾向がわかり、対処法を考えやすくなります。
客観的に水の出入りを見た結果、水を飲み過ぎていただけで実は頻尿ではなかった、といった発見があるかもしれません。また、排尿の記録は医師や薬剤師に相談する際にも、大きな参考になります。
冷えを防ぐ
冷えを防ぐには、体の外側と内側の両方からのアプローチが有効です。外側からの対策は、冷気が肌に触れないようにすること。暖房器具の使用とあわせて、カーテンを長めにする、カーペットを敷くなどして、外の冷気を部屋の中に入れないようにするのも効果的です。
内側からの対策は、冷たい食べ物や飲み物の摂り方を変えることです。温かい部屋にいても、アイスコーヒーやビール、アイスクリームなどの冷たい飲み物や食べ物を口にすると、体の内側から冷えていきます。
頻尿が気になるときは冷たい食べ物や飲み物を控えるか、温かいものと一緒にゆっくり食べたり飲んだりするように心がけるといいでしょう。
頻尿改善に有効な栄養素・食べ物は?
食事で十分なエネルギーを摂って、冷えを感じづらい状態になれば、頻尿の改善が期待できます。37℃前後の体温を維持し続けるために、体は多くのエネルギーを必要とします。エネルギーになる食べ物をしっかりとって、熱を生み出しやすい体を維持することが寒さ対策につながるのです。
炭水化物(ごはん・パン・麺)
エネルギーになる栄養素はたんぱく質、脂質、炭水化物の3つ。中でも、炭水化物は速やかにエネルギー源になり、老廃物も出づらく、体への負担が少ないという点でも優秀な栄養素です。
日本人の食事摂取基準では、エネルギーの50%以上を炭水化物から摂ることを推奨しています。炭水化物の摂取を減らしすぎると、栄養のバランスに偏りが出てエネルギー効率が下がり、熱が十分に生み出せなくなる場合もあります。
炭水化物を多く含むのは「ごはん」「パン」「麺」などの主食です。主食を中心におき、おかずや汁物は主食をおいしく食べるためのものと考えると、献立が立てやすくなりますよ。
ビタミンB群(肉・魚)
ビタミンB群は、炭水化物をエネルギーに変える際に重要な働きをする栄養素です。炭水化物は消化吸収されたあと、さまざまな化学反応を繰り返してエネルギーになります。化学反応に関係する栄養素が不足した状態では、熱を生み出せません。
ビタミンB群とはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6…など8種類のビタミンの総称です。ビタミンB群は単体ではなくチームで働くので、このように呼ばれています。
肉や魚を使ったメインのおかずを用意して、意識的にビタミンB群を摂るようにしましょう。ビタミンB群を特に多く含む豚肉や、ブリやカツオ、サワラといった旬の魚など、1週間~1か月単位でいろいろな食材を取り入れると、栄養のバランスをとりやすくなります。
マグネシウム(豆類)
マグネシウムも、炭水化物をエネルギーに変換するときに必要な栄養素です。マグネシウムはミネラルの一種で、体内では合成できないため、食事から摂る必要があります。
また、自律神経などの神経情報の伝達、筋肉の収縮、体温の調整にも関わるので、頻尿の人に意識して摂ってほしい栄養素です。
マグネシウムは大豆などの豆類に多く含まれています。煮豆など、豆そのままの料理でもいいですし、納豆や豆腐、味噌などの大豆加工品を活用してもいいでしょう。味噌汁なら、同じくマグネシウムを豊富に含む海藻類を一緒に摂ると効率的です。
頻尿にお悩みの人には漢方薬もおすすめ
生活習慣や食事に気を付けても頻尿が改善しないときは、泌尿器科の治療でも使われている漢方薬をのむという方法もあります。
漢方医学では、体内にたまった水分がうまく排出されないことが、排尿トラブルや下腹部の不快感などにつながると考えます。体内の水分バランスを調整するなど、体の内側から不調にアプローチする漢方薬で、排尿トラブルの改善を目指します。
頻尿に悩む人におすすめの漢方薬2つ
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
手足に冷えを感じる人の頻尿に使われます。水分代謝を整えるので、口の渇きや耳鳴りにも用いられます。
・清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
胃腸が弱い人の頻尿に使われます。自律神経を調整するため、不眠や動悸にも用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は繰り返す不調に対して、根本からの改善が期待できる薬です。そのため、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、専門家に相談して漢方薬の助けを借りるのも選択肢の1つ。自分にあった方法を取り入れて、頻尿の改善を目指しましょう!
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん
おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。