座間味島、そして、ギリシャでも奇跡が…
思えば旅先の奇跡はこの時が初めてではないのよ。「そんなバカかな!」の始まりは22歳の時の沖縄の本島から船で座間味島に、女友達と行ったときのこと。
私も友達も座間味がどんな島か知らなかったのよね。で、湘南とか伊豆の海水浴場の南の海版のつもりで海辺に行って、サンオイルを塗りあい甲羅干しをしていたの。人っ子ひとりいない寂しいは砂浜で、海だけがやたら青かったっけ。
そこに通りかかった4人グループのひとりが「えっ!」と声をあげたのよ。「うそだ!」と言ったのは私ではなく、友達のほう。なんと数年ぶりに会う大学の旅行クラブの先輩だって。先輩は旅行会社に勤めていて沖縄からのオプショナルツアーのアテンドで座間味に来たと言っていたの。
座間味が世界屈指の透明度を誇る海でダイビングの聖地になるずっと前のことだ。
旅先の奇跡は日本だけじゃない。26歳のときに訪れたギリシャのシフノス島は、池田満寿夫の監督映画『エーゲ海に捧ぐ』のロケ地になった島で、そこで仲良くなったご夫婦と、1週間後にアテネのパルテノン神殿の坂道でバッタリ。
女2人旅をしたイタリアでは、シチリア島で知り合った男のその友だちとローマの電話局でバッタリ。
前に並んでいた男が、「君たち、日本人? もしかしてアグリジェントから車で海水浴に行ったジャポネーゼって」と私にもわかるイタリア語で言うから「えっ? アグリジェント、行ったけど!」と言うと「おれ、そのときに男たちと友だちだよ! えーッ、ミラクル!」とイタリア男。私も覚えたてのイタリア語で「イルモンドえピッコロ!」(世界は小さい!、のつもり)と返したっけ。
危篤だった母ちゃんが“復活”した奇跡
「奇跡ですね」
そういえば2021年も何度もこの言葉を聞いたっけ。言ったのは茨城の実家にある地域医療センターの内科医U先生だ。
入院したばかりの時は危篤だった母親が家に帰ったらみるみる回復した様子を「心拍数も脈も落ちてどう見ても危篤だったんですけど、こんなことってあるんですね。医師をしていると、あんなに安定していた患者さんがなぜ? という方の衝撃はあっても、逆方向の奇跡は滅多にないんですよ」と言うんだわ。
U医師の母親を見るときの慈愛に満ちた目こそ、私にとっては奇跡。こんな真っ直ぐに患者と向き合う医師に母親は見守られていると思うと、私ももう少し優しい言葉をかけてもいいかな、と思ったりして。
今年は茨城暮らしですっかり体の一部となった原チャで、長旅に出たい、なんて夢を抱いている。そしたらまた何か面白い奇跡が起きるかしら。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。今年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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