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大塚寧々、陶芸家・吉田次朗氏と意気投合 陶芸の魅力は「無」になれること

初期の作品は鈍器級?

吉田さんの作るなんともいえない独特のグレーの色皿は、品が良く洗練されていて、凛とした雰囲気が漂う。ところが持ち上げてみると、驚くほど軽くて薄いのが特徴の1つだ。

大塚寧々と吉田次朗氏
吉田さんの作品に触れる大塚さん。食器には独特の手触りがある
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吉田:最初の頃は“作家もの”とかも全然知らなくて。多治見でいろんな産地を回っていたときに、古い焼き物なんかをいろいろ見て回ったりして…。アルバイトしながらそのお給料で家と工房を借りながら、たまに製作するような毎日で。

こんな生活しててもなんだから、ちょっとは作品を出さないといけないかなと思って作り始めたのが、白色の食器のシリーズです。最初はごはんを食べた後にお茶づけをしたくなるような平茶碗、ろくろですっと引き上げただけの切立(きったち)の湯のみ、小料理屋さんなんかでおばんざいをのせてるようなちょっと“ごつい”石皿とか。

今の薄い皿からは考えられないんですけど以前は重たい器が好きだったので、使うと変わっていく白のパターンを作り始めました。お皿は今は厚さ3mmか4mmが多いんですけど、その頃作ってたのは1cmぐらいあったんです。

今と同じ形でも、もう鈍器みたいなんですよ(笑い)。お店に持っていくと、重い重いって言われて。“重いからいいのに”って思ってましたけど。あんまり言われるので、使いやすいぐらいギリギリの薄さで作ってみようかなって思って今の感じになったんです。

もともと石とか重いものが好きで、石で作った器とか好きなんですよ。軽いのは軽いのでいいなと思うんですけど、紙皿とかも好きなので。グレーの皿よりもっと薄いものを作ったこともありますよ。ペラペラで、ちょっと触ったら折れるんじゃないかってぐらいの。

吉田次朗さんの作品
吉田さんの作品は食器から小さな人形まで幅広い
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迷ったり葛藤したりするけれど、心配せずに楽しめばいい

吉田さんの話に大きくうなずきながら聞き入る大塚さん。「女優」、「陶芸」と活躍する舞台は違うが、そこに共通する部分も多いようだ。話は、オンとオフの切り替え方から、普段の生活から仕事に関することまで「選択」というテーマに及んだ――。

大塚寧々と吉田次朗氏
「無」が自分には合っているという大塚さん
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大塚:もともと何も考えずにいる時間が好きです。「無」みたいなことが自分には合っている。あんまり過剰なもの・…それはそれで楽しいときもあるのですが、私にとってそれが落ち着いて美しいものかというと、そうではなかったりもします。

吉田さんの作品に惹かれるのも、シンプルで余計なものを排除したところがあるからかもしれません。物を作るお仕事のかたは、羨ましいし尊敬しますね。

吉田:大塚さんも物ではないけど作品を作られてますよね。書かれている連載エッセイも、大塚さんご本人が書く言葉だからか、読んでいて大塚さんの声が聞こえてくる感じがします。それがすごく好きですね。

大塚寧々
「自分が大切に思うこと」を大事にしていると明かす
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大塚:ありがとうございます! 私は役者という仕事をしていますが、役者という職業を選んだというよりは、自分自身が大切に思うことを何より大事にしようと思って、その結果たどりついたというか…。何かに執着しすぎると物事が見えなくなるって思っていて。

中学か高校の頃に読んだ小説で、こんな話がありました。川に、小さな小人たちがいっぱい住んでいる。小人たちはその世界しか知らない。そのうちの一人がその世界に飽きて、飛び込んでみようって川に飛び込んでみたら流されて。でも、その結果、新しい景色が見えたり、別の人が住んでいたり、新たな面白さを見つけられたという。

いついかなるときも、人間ってジャッジをしてるじゃないですか。ある道に行こうと決めるときもそう。ジャッジとまではいわなくてもなんとなく自分の勘とかで判断していることもある。それによってできる経験っていろいろあると思う。だから私はそんなに決めつけなくても、違うと思ったら違うほうへ行けばいいし、その逆でもいい。自分が大切に思うことを尊重しながら決めていけばいいと思うんです。

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