93歳の母親の性格は変わらない
そうしたら、「あはは、おら、そうたごと言わめな(私はそんなこと言わないでしょうよ)」と笑ってごまかした。そうきたか! 無言の私に、「病気なんだが、しゃ~んめ(仕方ないでしょ)」だって。自分に負い目があればあるほど強く出る。それが通じないときはヘラヘラ笑ってトボケる。昔からそうだ。
93歳の母親の性格は変わらない。要は「しゃ~んめな」を私が受け入れるか、拒否するかなんだよね。で、もうこれ以上は無理。施設に入ってと人から言ってもらったら、ノドに手を当てて「こうしてやっかんな」と自殺をほのめかした。「ああ、上等だ。やれるもんならやりやがれ!」と私。
と、これまでのあれこれを介護施設で働いている知人に話したら、「ああ、むりむり。90過ぎまで生きてきた人は体と気持ち、特に気持ちの強さが普通じゃないんだから。太刀打ちできっこないんだって」と言われたの。
薄々わかっていたことだけど、なんか、ストンと腑に落ちちゃった。
なんだかんだ言っても母親は野生で、私は時代に守られた甘ちゃんだなんだよね。施設に入らないというから、「母ちゃん、私だって心臓に持病があって薬飲んでんだよ」と訴えたら、「知らね。オラ、そうたごど(そんなこと)知らね」とキッパリ即答されたの。食うか食われるかになったら、食われるのは私に決まっているって。
だから母親を施設に預けた。この決断は間違っていなかったと、今は思っているよ。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【286】「シモの世話」でも喜びあえた母ちゃんとの“蜜月関係”がやがて崩れるまで