母ちゃんが楽しみにしていた地元のひなまつり
母ちゃん、どうしているかな。ラジオで介護中のあれこれを悪しざまに話した帰り道、夜行列車の車窓を見ているうちに老いた母親のことが急にかわいそうになってきた。
そういえば数年前まで、この時期の母ちゃんの楽しみは1か月間、町をあげて行われるイベント『真壁のひなまつり』だったのよね。1年かけて七味唐辛子や手芸品を作って町の駐車場のすみに店を張ると、飛ぶように売れたんだわ。「ばあちゃん、元気だったか?」と毎年、顔を見せる常連客もいるんだって、母ちゃんは顔をくしゃくしゃにして喜んでいたっけ。
そういえば家の前の畑をならしてじゃがいもの種いもをまくのも、母ちゃんが延々と続けてきた寒中行事だっけと、母ちゃんとのいろんなやり取りがよみがえってきた。その翌朝のこと。
「母ちゃんが吐いたんだって」
「母ちゃんが吐いたんだって。それでご飯が食えねぇで、薬ものめねみて」と、弟から電話があった。それから、「病院から軽い痙攣を起こしたって連絡がきた」とか、「血糖値の数値が極端にあがったんだって」とLINEが入る。けど、電話をかけると弟は「すぐにどうこうってことではないみたいなんだけどな~」と要領を得ない。
胃ろうなどの“生命維持装置”はしないというのは、最初から言ってあるけど、それ以外にもまだ打つ手があるのかしら。が、「いよいよ」が刻々と迫っていることには変わりがなくて、私は何をしても上の空だ。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【287】今になって怒りが沸々と…子供の頃、母ちゃんに散々言われた「テメはバガだが!」の言葉