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猫の死亡原因1位は泌尿器疾患 膀胱炎のリスク&予防策を獣医師が解説

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猫の膀胱炎のリスク&予防策とは?(Ph/AFLO)
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猫がなりやすい病気の1つに腎臓疾患がありますが(https://j7p.jp/73657)、実は、腎臓と同じ泌尿器系に属する膀胱にも、猫は病気を抱えがちです。獣医師にペットの身近な健康問題を聞くシリーズ。今回は、なぜ猫は膀胱炎のリスクが高いのか、どう予防すればいいのか、獣医師の山本昌彦さんに解説してもらいます。

猫に泌尿器疾患が多い理由と予防法

猫は泌尿器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)の疾患にかかりやすく、重症化することも珍しくありません。飼い猫の場合、成猫の死亡原因の第1位は泌尿器疾患で、3~4割を占めることが分かっています(アニコム家庭どうぶつ白書2021より)。

なぜ、猫は泌尿器疾患を患いやすいのでしょうか。山本さんによれば、「一つは、生き物としての身体の構造上の問題」だということです。

「猫の祖先はもともと砂漠で暮らしていたといわれています。飲み水が少ない環境なので、体内に水分をためこみ、その分、水分量が少ない濃い尿を作る身体になっていったと考えられます」

膀胱内の尿量が少ないと排尿に至らないので、濃い尿が膀胱に長くとどまることに。細菌が繁殖しやすくなり、炎症が起きることで、膀胱炎になるのだといいます。

運動と新鮮な水が予防に効果的

このような細菌性の膀胱炎が起きやすくなるのは、先祖伝来の体質のせいに加えて、猫の気質にも原因があると山本さんはみています。

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暖かいところでぬくぬく(Ph/AFLO)
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「冬の寒い時期になると、猫はこたつの中やホットカーペットの上、陽の当たる窓辺など暖かい場所を見つけて、ずっとそこにいたりしますよね。犬は散歩があるので冬でも運動量はそれほど落ちませんが、猫は気分のままに運動量が減ってしまいます。運動しないと喉が渇かないので水を飲みたがらない。水分摂取量が減ると尿量も減って、やはり濃い尿が膀胱にたまった状態が長時間続くことになります」

愛猫の膀胱を細菌の温床にしないために、予防法としては、「新鮮な水を用意して飲ませること」と「寒い日にこそ意識して愛猫とたっぷり遊ぶこと」の2つが特に有効だそうです。

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新鮮な水を与えて(Ph/AFLO)
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「寒い日は人間も動くのが億劫になりますが、愛猫のためにむしろ寒い日にこそ張り切って遊んでください」

細菌性の膀胱炎以外に結晶性や特発性も

また、細菌感染や腎臓の不調は、結晶性膀胱炎を引き起こすことがあります。

「本来なら弱酸性であるはずの尿のpH(水素イオン濃度)がどちらかに傾くと、尿内で化学反応が起きて結晶や、その結晶が核となりさらに大きな結石ができやすくなります。猫の場合、細菌感染によって、アルカリ性に傾くことが多いですね。

結石や結晶ができると、膀胱を内側から刺激したり、尿道を詰まらせたりして、またタイプの違った膀胱炎になってしまいます。特に尿道に結晶や結石が詰まってしまうと排尿ができなくなり、緊急の処置が必要になってきます」

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結晶性膀胱炎に注意(Ph/AFLO)
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さらに、猫には特発性膀胱炎のリスクも。

「頻尿や血尿など、膀胱炎の症状があるのに、検査をしても細菌や結晶が見つからないケースがあります。こうした膀胱炎を特発性と呼んでいて、原因のひとつはストレスだと考えられています。犬と猫で比較すると一般的に猫のほうがストレスを感じやすい傾向にあるので、気を付けてあげたいところです」

尿の色や量の変化を見逃さないで

膀胱炎の主な症状は頻尿、血尿。炎症で膀胱が刺激されて尿意をもよおすので、猫の場合はトイレに入る回数が増えます。そのわりに尿量が少ないのが特徴です。また、尿の色が変わったり、濁ったり、血や膿が混ざったりすることがあります。

「猫の泌尿器系の病気は十分に警戒すべきです。重症化すると排尿ができなくなって、尿が腎臓側へ逆流して急性腎不全になることもあります。急性疾患になって命に関わる、一番怖い事態です。排尿時の様子や、尿の色や量が普段と違うと思ったら、すぐに動物病院に相談してください」

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猫の状態をよく観察して(Ph/AFLO)
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飼い主さんは日頃から愛猫のトイレの様子(回数や量、色、ニオイなど)をよく観察しておいて、病気をいち早く見つけることが大切といえそうです。

「病気は発見が早ければ早いほど、短い期間で治ります。逆に、異常を見過ごしてしまうと重症化して入院が必要になったりします。猫には病気そのものだけでなく入院などで環境が変わることも苦痛になりますし、飼い主さんにも治療費の負担が増します」

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