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自己肯定感が低い人=怒りやすい人? 論破しようとする人にはスルーで対処が正解

怒っている女性
怒っている人にはどう対応したらいいのか。タイプ別にアドバイス(Ph/photoAC)
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あなたのまわりに、ちょっと注意しただけなのに攻撃的になってくる人はいないでしょうか? 彼らからの攻撃を最小限にとどめるには、どうしたらよいでしょうか?アドバイスをくれるのは、アンガーマネジメントコンサルタントの安藤俊介さん。近著『なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』(秀和システム)で、怒りの感情が起きるメカニズムを分析しつつ、そこからいかに自分の身を守ればいいかを解説しています。安藤さんに、攻撃的になりやすい人をタイプ別に分類してもらい、対策法を教えてもらいました。

安藤さんは、「自己肯定感の低い人ほど、怒りやすい傾向がある」と分析しています。

「自分のミスを指摘されたり言動について注意されたりすると、まるで自分の価値が貶められたと捉え、そこから自分の尊厳などを守ろうとするため攻撃的になるのです」(安藤さん・以下同)

自己肯定感の低い“怒り人”にはさまざまなタイプがありますが、次の5タイプを安藤さんにあげてもらいました。対処法とともに見ていきましょう。

【1】論破しようとしてきたら聞き流すのが吉!

まずは、論破しようとしてくる人。

「建設的な議論よりも相手を言い負かす、いいくるめることに価値があると考えるタイプです。相手を論破することは、対話するよりもはるかに簡単です。ある死守したい立場を決めて、何を言われてもその立場から主張を続けていれば、かなりの確率で相手を言い負かすことができるからです。

ところが、対話は相手の言い分を受け入れる度量がなければできません。自分とは違う意見や価値観を受け入れ、その上でお互い建設的になるように合意を作りながら、慎重に議論しなければならないから。一方的に言いたい意見があっても、ある程度は控えなければいけないので、人によっては大きなストレスになります」

では、論破してこようとする人、特に怒りの感情に任せて言い負かそうとしてくる人に対しては、どうすればいいのでしょうか。安藤さんの答えは「スルーすること」。

論破してこようとする人
論破してくる人には何を言われてもスルーすること(Ph/photoAC)
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「相撲のごとく、正面から突進してくる人を真正面から受け止めるのはかなり骨が折れます。合気道のように、相手から攻撃されても受け止めず、流しましょう。何を言われても暖簾(のれん)に腕押しとばかりに聞き流すのが基本です。

論破したい人は、相手からの反撃をエネルギーにして、さらに強く畳みかけてきます。ですから、こちらから相手の餌になるようなものを差し出さない。そうすることで、言い負かしたいという気をそらすことができるのです」

【2】あおり運転をされたら脱兎のごとく逃げるべし!

次に、あおり運転をしてくる人。

あおり運転
迷惑なあおり運転をされた場合は?(Ph/photoAC)
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「さまざまな理由がありますが、高額な車に乗っている人が偉い、大きい車に乗っている人が強い、運転のうまい人がすごいといった車の価値、運転技量の優劣を自分の価値と思い込んでしまう可能性が挙げられます。“価値のある自分”に対し、意に沿わないことをした人には猛烈に攻撃をします。時にはそれが犯罪的な行為になることもあります。

運転手は匿名で、車は“鉄の箱”に囲まれた安全空間です。身元がばれない、安全圏にいるという安心感から、虚勢を張りやすくなります。特に、普段の生活の中でストレスを抱えていたりすれば、そのうっぷんを晴らすには都合のいい場所です。さらには、普段、自分に自信を持てない人が虚勢を張ることができれば、相手を攻撃しやすくなります」

では、もし自分があおり運転に遭遇したときは? やるべきことはただ一つ。脱兎のごとく、逃げること。

「相手の視界に入っているうちは、相手も攻撃をしたくなります。路肩に停車することができるなら、路肩に駐車してやり過ごしましょう。その際にはドアはロックし、相手が降りて近づいてきたとしても、窓を開けてはいけません。そのとき、証拠のためにとスマホを向けて録画をしようとする人がいますが、それは相手の怒りをさらに焚きつけてしまうため注意が必要です」

【3】蔭口を言いふらされたら事実を述べて反論するor距離を置く

厄介なのが、陰口を言いふらす人。

「面と向かって意見を言う勇気がない、直接言っても自分の言い分は通らないし、口論でも勝ち目がないと思っている人が陰口を叩くわけですが、その裏には強い嫉妬心が隠れています。

嫉妬心にとらわれている人は、自分がうまくできないことを、他人がうまくこなせているのを見ることで、自分がダメで、価値がないように思えてしまうのです。

悪口を言っている女性達
悪口の裏側には強い嫉妬心がある。間違いは正し、あとは関わらない(Ph/photoAC)
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陰口の対象者が近くにいることで、自分の自己肯定感を下げ続ける存在になると考え、強い嫌悪感を持っている可能性があります。自己肯定感を上げるのも下げるのも自分次第なのですが、本人は他責傾向があるためにそうは思いません」

では、もし自分が陰口の被害に遭ったら?

「明らかな嘘、事実と違うことについては、丁寧に事実を述べ、反論をしましょう。どうしてもうっとうしいようなら、距離を置いてもいいでしょう。付き合いが薄くなれば蔭口を言うにも言えなくなります。全く関係ない人の陰口は言えないものなのです。やはり、ここでも逃げるが勝ち、なのです」

【4】無関係なのに怒ってくる「当たり屋」からは逃げ切る

「自分のことを言われているわけでもないのに、さも自分が言われているかのように怒るタイプ。自分からぶつかりにいく当たり屋のようです。

怒りは、自分が大切なものを守るために備わっている防衛感情です。何を大切に思うかはそれぞれ自由なのですが、大切なものが多すぎたり、範囲が広すぎたりするとそれだけ怒りが生まれる機会が増え、大変です。

このタイプの人は、自分の人生には直接関係ないと思われることでも、ムキになって怒ります。例えば、自分が姑の立場の場合、息子の嫁の家事育児が気に入らないと口を出すといったケースです。息子夫婦とは別居しているため、直接自分には関係ないものの、そのやり方をされることで、自分の価値観を踏みにじられた気がして、怒らずにはいられません」

このタイプは「当たり屋」とみなして割り切るか、逃げ切ることが対策になります。

怒っている女性ふたり
直接関係ないことでも怒ってくる人からは逃げるが一番(Ph/photoAC)
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「当たり屋に遭遇するのは、ある種、運不運もあります。当たられたら運が悪かったと割り切る方法もあります。あるいは、当人にとっては当たること自体が目的になっていることがほとんどなので、その場だけ話を聞いておいて、あとはスルーしておいても問題は大きくならないでしょう」

【5】価値観を押しつけてくる人には、受け入れるか別の方法があることを伝える

最後は、価値観を押しつけてくる人。

「自分の価値観が正しいと思い込み、己の価値観を押しつけ、相手が拒否したりすると、『なぜわからないのか』と執拗に怒る。ある意味、多様性を受け入れられない人です。多様性を受け入れることは、自分とは違う価値観の人を受け入れること。ところが、自己肯定感の低い人は、自分の価値観を守ることに精一杯なので、他人の価値観を受け入れる余裕がありません。

それどころか、自分と違う価値観の人が近くにいることは、自分の価値観を傷つける存在、危険な目に遭わせる存在と考え、敵視する人もいます」

夫婦間の家事シェアを例にすると、同じ食器洗いでも、「食洗器を使うよりも手洗いの方が汚れが落ちるから」と、自分が信じているやり方を押し付け、その通りにしないと怒るケースです。結果として食洗器できれいに洗えたとしても、自分の思うように動かなかったことについて腹を立て続けます。

怒っている人
価値観を押し付けられたらまずは否定せず話を聞くこと(Ph/photoAC)
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「もし身近にこのような人がいた場合、『価値観を押しつけるな』という価値観を押しつけてしまったら、同じ穴のむじな。相手の価値観を否定せず、素直に聞いた方がいいものは受け入れ、受け入れる必要がないものについては別の方法があることをサラッと伝えることが、ベストです。

価値観の違いは自然なこと。自分と違う人の価値観を受け入れたからといって、それは負けたことでも自分の価値が下がることでもないことを覚えておきましょう」

いずれのタイプも、「闘わないこと」が大原則。その上で、逃げる、受け流す、距離を置く、否定しないで受け入れるなどして、うまく身をかわしましょう。

◆教えてくれたのは:アンガーマネジメントコンサルタント・安藤俊介さん

アンガーマネジメントコンサルタント・安藤俊介さん
アンガーマネジメントコンサルタント・安藤俊介さん
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一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、日本の考え方、慣習、文化に合うようにローカライズする。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。近著に、『なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』(秀和システム)がある。https://twitter.com/andoshunsuke

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