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菊池桃子『卒業』は”ため息ボイス”がイイ、松田聖子『制服』はB面の名曲…3月に聴きたい「旅立ちの歌」

1990年代の旅立ちソングはKANの『愛は勝つ』など「応援」が主流に(写真は1991年、Ph/SHOGAKUKAN)
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『愛は勝つ』『遠く遠く』…1990年代は「応援ソング」が主流に

さて、次は1990年代。この頃は全体的に、季節感より心象風景を前面プッシュする曲が増えてきた。そのため卒業シーズンだけでなく、夏だろうが冬だろうが、オールシーズン「旅立ちのときにもしっくりくる応援ソング」が豊作。いつでもどこでも背中を押してくれる……そんな名曲の数々が生まれていた。

たとえば、KANさんの『愛は勝つ』、槇原敬之さんの『遠く遠く』、やまだかつてないWinkの『さよならだけどさよならじゃない』、Kiroroの『未来へ』、岡本真夜さんの『TOMORROW』、GLAYの『BELOVED』などは、私も高校時代に歌いたかった! と羨むくらいだ。

余談だが、KANさんの『愛は勝つ』を聴いたときは、ありそうでなかったタイトルに驚いた覚えがある。エッ「勝つ」と言い切っちゃうのか、と!

なにせ「やせ我慢」「敗者の美学」をテーマとする昭和歌謡で育った世代。「愛は負けない」がタイトルなら驚かなかった。それが、「勝つ」と断言し、しかも恋愛だけではなく老若男女すべてへの応援歌になっていることに、新時代を感じたものである。

『どんなときも』で一躍注目を浴びた槇原敬之(写真は1991年、ph/SHOGAKUKAN)
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この「オールシーズン応援ソング豊作期」がしばらく続き、1998年あたりから、スピッツの『チェリー』など、再び季節感がジワジワと復活。そして「桜ソング」ブームが起こるのはご存じの通り。

『さくら(独唱)』(森山直太朗)、『サクラ・フワリ』(松たか子)、『SAKURA』(いきものがかり)など、思春期の楽しさだけでなく、不安や寂しさ、戸惑いも桜吹雪に乗せてザッと降らせるイメージだ。

桜ソングは私もカラオケでよく歌ったが、若い頃の「失敗・やらかし」がやたらと思い出されてしまう。そして、心を込めて歌うことで黒歴史が消されていく気がする。なぜだろう?

年を取ってから沁みてくる長渕剛の『乾杯』

「年を取ると沁みてくる」卒業・旅立ちソングもある。私の場合は、長渕剛さんの『乾杯』がそれ。再レコーディング・リリースにより大ヒットした1988年当時は全くピンと来ていなかった。ところがこの間久々に聴いたら、なぜか歌詞を見ずツラツラと口ずさみ、しかも遠い目になり大切な人の幸せまで願ってしまった。曲が終わっても10秒ほど続く陶酔……。中年になってからの『乾杯』共感度、なんとデンジャラス! あの頃こぞってオッサンたちがカラオケで歌っていた気持ちが、オバハンになって痛いほどわかった。

人も歌も、心から旅立ったり戻ったりを繰り返すものなのだなあ。ならば気まぐれぐらいがちょうどいい。そのたびに言おう。出会ってくれてサンキューと!

皆さんの心の旅立ちソングはなんでしょうか。

◆ライター・田中稲さん

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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