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怒りを抑えるためには?「6秒待つ」「白黒つけない」など6つのルール

口を覆う女性
感情任せで失言しないために。怒りを静める6つのルールとは?(Ph/PhotoAC)
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SNSを開けば、個人の一挙手一投足や、企業の表現に怒る人など、怒りが蔓延している現代。ネットの世界だけでなく、リアルでも身近な人物や物事に、ちょっとしたことで怒りを感じることもあるでしょう。ですが、感情任せについ言ってはいけないことを口に出し、相手の気分を害してしまったり取り返しのつかないことになるのは、避けたいものです。

そこで、アンガーマネジメントコンサルタントの安藤俊介さんに、怒りを鎮めるための6つのルールを教えてもらいました。安藤さんは怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。これまで研究してきたノウハウをもとに、近著『なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』(秀和システム)では、昨今の日本人の“怒りブーム”の原因分析とともに、そこから自分の身を守る術を紹介。そのワザとは――?

怒りの炎を広げないルール【1】カッとしたら6秒待つ

安藤さんは、怒りを感じたとき、いかに「怒りの衝動」をコントロールするかが重要だと説きます。

例えば夫婦喧嘩などで「出ていけ!」「出て行ってやる!」などと売り言葉に買い言葉で返すケースは、怒りによる反射行動の代表例ですが――。

「怒りを感じたときは、6秒間は何も言わず、反射的な行動をしないようにしましょう。

というのは、怒りが生まれてから6秒あれば、理性が働くと考えられているから。6秒待つことで、今自分に芽生えた怒りが、本当に怒る必要があるのかどうか、改めて考えることができます。また、不用意な発言をして泥沼化することも防げます。

待つことによって口論で不利な形勢になってしまう? 即座に切り返したい? その気持ちもわかりますが、ここはぐっとこらえましょう。冷静になったもの勝ちです」(安藤さん・以下同)

夫婦喧嘩
言い返したい夫婦喧嘩もグッと6秒待つ。冷静になった方が勝ち(Ph/photoAC)
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6秒経てば「まあいいか」と受け流せるかもしれません。「6秒」は、最初こそ長く感じますが、回数を重ねれば待つこと自体、苦ではなくなるでしょう。

怒りの炎を広げないルール【2】ネガティブな感情に共感しない

感受性が高い人は、誰から怒りや悲しみなどネガティブな感情を吐露されたとき、つらいニュースを見たときに、一緒になって怒ってしまうことがあります。

「その際、自分も一緒に同じレベルで同じ気持ちになる必要はありません。瞬間的に共感して腹を立てるのはいいですが、いつまでも腹を立てていると負の感情に支配され、疲労が残ります。

こうした“共感疲れ”をしやすい人は、自分と相手の間に線を引くことが大切です。思ってもいないことに同意しないこと。仮にその場では共感しても、離れたあとは、忘れる努力をして決して引きずらないようにしましょう」

友達との間に線を引く
相手が感じた負の感情を共感しても引きずらない。それが難しいなら人との間に線を引こう(Ph/PhotoAC)
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怒りの炎を広げないルール【3】白黒つけない

例えば、「自分から挨拶してくる人はいい人。そうでない人はダメ人間」などと、白黒をつけようとする思考をしている人は注意が必要です。

「物事を白か黒で考える“白黒思考”の人は、物事が正しいか間違っているか、好きか嫌いか、など両極端に分けて見てしまいがち。その中間としてグレーがあること、曖昧さを許容しません。また、世の中には味方でもなければ敵でもない人、つまり自分に関心のない人の方が圧倒的に多いのですが、そういう“グレーゾーン”の人たちも全部ひっくるめて、味方か敵かを認定します。

女性同士が会話している
何事も白黒つけず、いろんな人がいることを理解すれば自分の気持ちもラクになる(Ph/photoAC)
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何事にも白黒をつけようとすると、寛容さを失うことになり、怒りの火種を生む大きな原因となります。『自分は挨拶した方が気持ちいいが、人見知りで挨拶が苦手な人もいる』などと、自分と違う人を敵ではなく、そういう人もいるんだと理解し、人に寛容になることを意識しましょう。そうすることで怒りを感じる回数が減り、自分自身がラクになります」

怒りの炎を広げないルール【5】プライドのために闘わない

例えば、自分は料理がプロ並みだという自負があるのに、「お料理教室に行かない?」と誘われて、カチンと来た。「失礼ね! 私は教えられるほどの腕前なのよ! もしかしてマウンティング?」と怒りたくなった――。

「このように、自分自身のプライドのために怒りのエネルギーを費やしたくなる気持ちは分かります。ただ、プライドは、そこまで守る必要があるものでしょうか? 相手から暴力を振るわれていれば物理的に守らなければなりませんが、自分のプライドを攻撃されることは物理的な攻撃ではありませんし、実害はないのではないでしょうか。

相手が自分をマウンティング攻撃していると思わなければ、それはマウンティング攻撃になりませんし、自分の名誉、プライドを守ろうとして怒ることもないのです」

女性が話しかけている写真
相手の言葉をどう取るかで自分が思う気持ちも変わってくる(Ph/PhotoAC)
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「モノは考えよう」。物事の受け取り方は右にも左にも、表にも裏にもどうとでも取れます。もしかしたら相手は、仲良くなりたくて誘ってきただけなのかもしれない。そう思えば、そこまで憤りは覚えないのでは。

怒りの炎を広げないルール【6】融通無碍を意識する

「融通無碍(ゆうづうむげ)とは、考えや行動に制限がなく、のびのびと自由にしていること。その逆は、頑固。よく言えば首尾一貫していると言えますが、融通が利かないため、イレギュラーなことや変化に弱く、それが怒りにつながることもがあります。頑固な人には強いこだわりがあり、こだわりとは自分にとって大切なものだから、守ろうとして怒りにつながるのです」

女性の場合、結婚、出産、職場の変化、育児、介護など人生を通して、変化を迫られる機会が多いもの。その都度、「なぜ生活を変えないといけないの!」と怒ってストレスを溜めるより、多少の抵抗はありながらも「この生活のおかげで、今まで知り合う機会のない人とも仲良くなれた」などと前向きに受け入れるほうが、楽しく生きることができます。

子連れ
結婚、出産、職場の変化…その時々の変化を前向きに受け入れよう(Ph/PhotoAC)
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今の気持ちを怒りの炎で燃やすか、希望や楽しみで満たすかは、自分次第。気持ちをコントロールできれば、人生も変わってくるはずです。

◆教えてくれたのは:アンガーマネジメントコンサルタント・安藤俊介さん

アンガーマネジメントコンサルタント・安藤俊介さん
アンガーマネジメントコンサルタント・安藤俊介さん
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一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、日本の考え方、慣習、文化に合うようにローカライズする。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。近著に、『なぜ日本人は怒りやすくなったのか?』(秀和システム)がある。https://twitter.com/andoshunsuke

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