女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第22回は、寧々さんの「母の日」のエピソードについて。
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母の日は、子供の頃はカーネーションをプレゼントしていた。大人になってからは、母が好きな洋服やカバンなど。そして最近は、物ではなく旅行や温泉にしている。(ここ数年は行けてませんが)
なぜ、物ではなくなったかというと、母の家は物であふれているからだ。捨てられないのか、本当にたくさんの物が家中に置かれている。同じような物もたくさんある。
そんなこともあって、旅行に行ったり、食事行ったり、家族との時間を楽しく過ごす方がいいのではないかと思ったのだ。
私は一人っ子なので、母とのふたり旅もいいものだ。そんなに細かくスケジュールを決めずに、ゆっくりのんびり気ままな旅が心地よい。母に行きたい場所を聞いたりするのも楽しい。 行く先々で、新しい発見があったり、出会いがあったり、温泉にゆっくり浸かったり。
母は高齢なので、とにかく健康でいてほしいし、笑顔があふれる幸せな時間を過ごしてもらいたい。母は普段は杖を使っていて歩くのもゆっくりになったが、興味があるものを見つけると、 歩くのが少し速くなる。そんな時、私は後ろからスタスタ歩く母を見て、笑みがあふれる。後ろ姿が、なんだかいつもより可愛く見える。
何歳になっても、好奇心があるのは素晴らしいなあと思う。母は、幾つになっても好奇心旺盛だし、日々の生活のなかで、さまざまな工夫をしている。嬉しそうに、何かを作っている姿をみると、こちらまで幸せな気持ちになる。
息子が書いてくれた「お母さんいつもありがとう」
私も母になり、息子がプレゼントをくれたりする。毎年ではなく、時々忘れている年もありますが…。小さい時は、彼が描いてくれた絵とか、あとは、字が書けるようになった頃はタンブラーに「お母さんいつもありがとう」とか書いてくれた。
その気持ちが本当に嬉しい。もちろんそんな事、息子には恥ずかしくて言いませんが…大きくなってからは、ちょっと照れくさそうに、いつもよりぶっきらぼうにプレゼントしてくれる。
父の日や、母の日、子供の日など、本当に「感謝する日」だなあと感じる。家族や友達みんなが健康で日々過ごせる事がありがたいなあとつくづく思う。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。現在、出演映画『軍艦少年』が公開中。