女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第17回は、寧々さん一家の「節分」のエピソードについて。
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節分といえば、子供の頃本気で嫌だった。年の数だけ豆を食べるのも苦手だった。
子供の頃はわからなかったが、父が変装した鬼が本気で怖すぎて、大泣きした記憶がある。
小さい時の私の部屋は一階の角で、二方向に窓があり、こっちの窓からすごく怖い顔の鬼が来て、いなくなったかと思うとすぐにもう一つの窓から現れる。体が震えた。鬼の形相も怖かったが、唸るような声の大きさに本気でぞっとした。
しかし、大人になっても豆まきはする。 豆を食べるのは、相変わらず苦手だが…50代も半ばになり、そんなにたくさん食べられない。 私は10年を一粒と勝手にカウントして食べているが、 みなさんはどうしているのだろうか?
豆まきの途中「ちょっと待って~」
数年前、夫と子供と元気よく「鬼は~外」と言いながら庭で豆を撒き、「福は~内」と叫びながら豆を家の中に撒こうとしたが、モチ(トイプードル・女の子)がチョロチョロしていた。「ちょっと待って~」と私は言った。豆をモチが食べちゃっても大丈夫なのかな?
…止まる私達。モチが我が家に来てから初めての豆まきだったかもしれない。 とりあえず、モチが食べちゃってお腹をこわしたりしたら大変だから、やめておこうという事になり、 あとで「福は内」はモチが食べないようにやるという事になった。 そして、「鬼は外」だけ、元気よくやった。
数日後、夫と話している時に、ふと思った。
「あれ、私達って結局 福は内やったんだっけ?」
「いや~やらなかったかも…」
しまった!「鬼は外」はやったけど、「福は内」忘れた。
今年はわが家には福が来なくなってしまうのか~とちょっと焦った。
どうする?と言いながら、結局「まあいいか」という結論に。もう、豆はないし、また買うのもなんだし。来年は「福は内」を絶対に忘れないようにしようという事に落ち着いた。とりあえず、心の中で「福は内」とつぶやくことにした。
そして、節分というと、節明けという意識がある。 節が明けて、新しい年みたいな感覚だ。なので、節が明けたら、行ける時に、近くの神社に行くことが多い。お正月よりも節明けの方が私は新年を迎えた気分になる。
とはいえ、今年も豆まきはする予定。「福は内」忘れないようにしよう!
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。現在、出演映画『軍艦少年』が公開中。