女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第18回は、寧々さんの「雪」のエピソードについて。
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50代半ばになっても、雪が降るとワクワクする。 いつもの見慣れた景色が白で包まれていくと、雑音が消え、静かな世界になっていく。 空気もどんどん綺麗になっていく感じがする。
雪の上に大の字になって、空を見上げるのが大好きだ。冷たくなってきて、あまり長い時間は出来ないが…。
子供の頃からよく大の字になっていた記憶がある。あとは、そり! そりが大好きだった。小さい時は、庭のちょっとだけ傾斜になったところで、何回も何回も滑っていた。大人は無理だが、子供だから体も小さいので、ちょっとのスペースで滑れて、すぐに登れるから、 何回も繰り返し遊んだ! 今でも愛用していた赤いそりを覚えている。 家族でスキー場に行っても、本当はスキーよりそりで遊んでいたい。
雪かき中に思いついたあること
数年前、東京ですごく雪が降ったことがあった。雪が大好きと言っても、降った後は、大変だ。滑らないように雪かきしなければいけない。あんなに真っ白で綺麗だった雪がグレーになり、悲しい感じになる。
その時は、夫が仕事でいなかった。 一人で雪かきするしかない。重い腰をあげて、庭から始めた。とりあえず、端の方にまとめよう。しかし、雪ってなぜこんなに重いのだろうと、一人ぶつぶつ言いながら雪かきしていたら、ふとモチ(トイプードル・女の子)が部屋の中からしっぽを振って「私も庭に出る~」と催促していた。
ん、モチはまだ子犬だったけどケージとか包まれた中にいるのは好きだから、かまくら好きかも!と思いつき、私は一気にスイッチが入り、やる気になった。モチにかまくら作ったら喜ぶかも~。
せっせせっせと、それまでのダラダラな感じとは違い、頑張ってモチ用かまくらを作った。
モチ用かまくらが完成し、「モチ 出来たよ~」と言いながら、モチを庭に出した。……モチはソロソロと出て来て。クンクン匂いを嗅ぎながら、不思議そうな顔をして私をみている。なかなか中に入ってくれない。しばらく待ってみたが、全然入ってくれない…仕方ないのでモチを抱き上げて中にそっと入れてみた。 が、すぐに外に出て来た。
もう一度中に入れてみる。入れた瞬間にくるりと向きをかえ出て来る。雪が冷たいのかもと思い、小さいブランケットを敷いたが、それでもダメ。モチ用かまくら、見事に失敗だ。
帰ってきた夫は苦笑いしていた。今度また雪が降ったら、もっと大きなかまくらを作ってみたいと思う。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。現在、出演映画『軍艦少年』が公開中。