あからさまなPPLで「警告」を受けた作品も
過度なPPLが視聴者を怒らせ、不本意な視聴率につながった作品をご紹介します。イ・ミンホとキム・ゴウン主演の『ザ・キング:永遠の君主』は、過度なPPL により放送通信広告審議委員会から「警告」を受け、視聴率も下落、イ・ミンホの除隊後初作品であったにも関わらず、彼のキャリアに大きく傷をつけた作品となってしまいました。
中でも、イ・ミンホ扮する、パラレルワールドから現代韓国にやって来た皇帝がボトルコーヒーを飲み、「皇室のコーヒーと同じ味だ。深みがあってキレもある…」と、CMばりの感想を述べたシーンは、視聴者の間で是非をめぐる論争が起こり、こんなセリフを言わされたイ・ミンホへの同情論も多くあがりました。
また『ヴィンチェンツォ』のように、主演のソン・ジュンギがインスタントの中国製ビビンパを食べるシーンが、テレビ放送後に「韓国の伝統食がなぜ中国製として登場するのか」などと韓国の視聴者の反発を招き、動画配信サービス(OTT)とビデオ・オン・デマンド(VOD)配信ではそのシーンがカットされたケースもあります。
「堂々と果敢なPPLマーケティング」がトレンド
これまで視聴者を疲れさせてきたPPLですが、ここへ来て変換期を迎えています。2021年に発表された韓国の市場と消費の評価専門誌『消費者評価』によると、「今はむしろ、楽しい要素を加えながらもPPLの機能を果たすことがトレンド」と分析され、PPLを積極的に活用して話題になった、チ・チャンウク主演の『都会の男女の恋愛法』をあげています。
ヒロインが店でピザを食べている後ろに映っている、エキストラの客たち3人が着ているトレーナーの背中や前面のロゴに、それぞれ「P」「P」「L」という文字を入れて、クスっと笑える要素を加味しています。この演出に対する韓国視聴者の反応は熱く、同時にピザブランド自体も関心を受けることに成功したケースだと、本記事では結んでいます。
このように、ドラマやバラエティー番組でPPLを隠さず、むしろ見どころにすらしていくことが、1つのトレンドとなっています。
韓国ドラマの醍醐味としていっそ楽しむ
『愛の不時着』のような大作ですら、PPLのチキンや特定商品が頻出したり、制作サイドの苦労はたやすく見て取れます。
映像美や洗練された演出、練り込まれた脚本といった韓国ドラマのクオリティの高さと、「炎上したらカットすればいい。えーい、突っ込んでしまえ!」的な大雑把な面との差はあまりに大きいのですが、その差、矛盾こそが、韓国という国の魅力だと私は常々思っています。
このごちゃまぜな感じを、韓国ドラマの醍醐味として楽しめたらしめたもの! そして韓国旅行に出かけたときに、好きな作品に登場するコスメやフード、カフェなどのPPLブランドを探して、実際に身につけたり食べてみたり、そんなドラマの楽しみ方もおすすめです。
◆韓国エンタメライター・田名部知子
『冬のソナタ』の時代から16年、K-POP、韓国ドラマを追いかけるオタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2018年に韓国の名門・梨花女子大学に短期語学留学し、人生2度目の女子大生を経験。twitter.com/t7joshi