人生は螺旋階段。気づけば遠くの景色が見えるようになっている
入学してから修士、博士課程を修了する5年間は連日勉強に追われ、自ら「暗黒時代」と語るほどハードな日々だったという。
「博士課程のあとにすることが決まっているわけではないので、“こんなこと、なんの意味があるんだろう。しんどい。もう無理”と何度も思いました。それを乗り越えられたのは、26歳の自分がいたから。周囲の反対を押し切り、自分の判断でCAを辞めた。自分で決断した道なのだから、もう1日だけ頑張ろう、翌日もあと1日だけ頑張ろうと進み続けました」
困っている人がいたら傘を差し出す
ゆっくりでも歩み続けているうちに、河合さんは「不安の反対は安心ではなく、前に進むこと」だと気づいたという。
「人生も後半戦になってくると、アーリーリタイア、スローライフへの憧れを耳にします。でも、もしスローダウンした生活を送ったとして、同年代の人が活躍していたら焦ったり、不安になってしまうと思います。私は、人生は螺旋階段だと思っています。同じところを回っているように見えても、足を止めずに進んでいると、違う景色や遠くの景色が見えるようになっている。だから、前に進むためにも学びが大切です。
私は1人きりでなにかをやり遂げたことはありません。無理だと思った時には、いつも傘を差しだしてくれる人がいた。その恩返しをするためには自分が頑張るしかない。すると、雨がやんで太陽の光が見えるころには成長しているはず。年齢を重ねるほど謙虚に前に進んで、雨に濡れている人がいたら傘を差しだす。それが結局は、自分の可能性を広げることになるのです」
◆健康社会学者・気象予報士・河合薫さん
1965年10月23日生まれ。千葉県出身。大学を卒業後、全日本空輸に入社。1994年、気象予報士第1号として『ニュースステーション』(テレビ朝日系)などに出演。2004年に東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。現在は健康社会学者として、執筆や講演活動、テレビ、ラジオなどで発信を続けている。今年3月、約900人のインタビューや実体験を通して語る幸福論『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)を出版。https://twitter.com/kaorunseizin
取材・文/小山内麗香