腎不全や甲状腺機能亢進症も嘔吐の症状が出る
さらには、腎不全や尿毒症など、腎臓の病気も猫が吐く原因になりえます。猫は人や犬に比べて腎臓疾患のリスクが高い動物です。
「腎臓が悪くなって慢性化してくると、諸症状が出てきます。嘔吐もその一つですね。ただ、病態が進行して吐くようになるので、半年に1回など定期的に、検査をしていれば、症状が出る前に異常が発見できると思います」
高齢の猫では、甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)によって吐くこともあります。甲状腺は喉元にあって、体の代謝を活発にするホルモンを分泌していますが、このホルモンが過剰に分泌されて攻撃的になったり多飲多尿になったりするのが甲状腺機能亢進症です。
「この病気の場合は、嘔吐しますが食欲は増してきます。10歳を超えた猫で最近やけに食欲が増しているものの、食べたあとに吐いてしまうというときは、この病気の可能性もあります」
ストレスや空腹で吐くことも
他には、ストレスがたまった場合や異物を飲み込んだ場合、空腹が続いた場合などにも猫は嘔吐することがあるそうです。
「空腹で吐くのは、胃の中に消化すべき食べ物がないのに胃酸が出てきて刺激されるからですね。
異物は犬に比べると、起きる頻度は高くないと思いますが、緊急の場合もあるので注意が必要です。飼い主さんが料理をしている間に、猫がキッチンへ入ってきて、ネギなど猫が食べると毒になるようなものを口にすることはあるかと思います。そんなときは、吐いたあとはもうケロッとしていたりしますが、すぐに動物病院に連絡したほうがよいです。その他、小さいおもちゃなどを飲み込んでしまい、胃や腸に詰まってしまうこともあります」
嘔吐が続くようなら早急に診察を
飼い主さんが取るべき行動とまとめると、毛球や空腹で吐いた場合はひとまず様子を見る、それ以外の場合は病院受診を検討するということになります。
「特に、嘔吐が続く(さっきも吐いたのに、すぐに吐く)、嘔吐以外の症状がある(食欲不振、ぐったりしているなど)場合は、早急に獣医師の診察を受けましょう。その際、どのように吐いているかなど動画を撮影したり、吐いたものを持参するなどすれば、診断の助けになることもあります」
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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