2人旅を母ちゃんが拒んだワケ
それだけじゃない。私は一度くらい母ちゃんとふたりで旅行をしたいと思って、誘ったことがあるの。珍しくフトコロがあったかかったから母ちゃんに贅沢をさせてやりたいと思ったんだよね。
そうしたら、「それはムリだな」とキッパリ断られた。その口ぶりで母ちゃんの気持ちがわかった私は深追いせずに「ああ、そうか」で終わったんだわ。
もし次に言葉を続けるとしたら、「父ちゃんがひがむべな」に違いないんのよ。
“父ちゃん“は母ちゃんのニ度目の夫で、11歳年下の弟の実父だけど、私にとっては義父。私が母娘の旅に誘った時は、まだ義父ちゃんが母ちゃんを助手席に乗せて、関東一円の温泉地巡りをしていたころだったから、「なさぬ仲の自分を差し置いて」と、かなり面倒なことになると母ちゃんは気づかったんだね。
とまあ、そんな家庭の事情があったので母ちゃんと私は近いようで遠い、遠いようで近い関係だったの。それが変わったのは4年前に義父が亡くなってからで、もう誰を気遣うこともない。それで気が抜けた? 母ちゃんの体のあちこちに不具合が見つかりだしたんだわ。
そうそう。そういえば介護を始めてから亡くなった義父がニ度、現れたのよ。その話はまた改めて。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【299】母ちゃんが不慣れなリモート通話で一度だけ大喜びした出来事