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薄井シンシアさん、心の不調を抱える人に「陰ながら応援」ではなく「具体的な支援」と考えるワケ

悩みを一人で抱え込むのが美徳ではない

――周りの人たちも、声の掛け方や手の差し伸べ方を間違えて、余計に相手を嫌な気持ちにさせたらどうしようという不安があるのかもしれないですね。

真理子さん:それは確かに言われましたね。うつ病の人の扱い方が分からない、関わり方が分からないって。

シンシアさん:だからと言って、「そっとしておく」とか「陰ながら応援」って私は嫌ですね。もちろん、その人の症状にもよりますが、本気で助けたいなら具体的に手を差し伸べたい人がいてもいい。私は自分が社長だから(真理子さんの展覧会が)できたのかもしれないけど、こういうやり方が広まってほしいと思います。悩みを一人で抱え込むのが美徳のようになってしまっている状況はおかしいですよ。

真理子さん:だから、私みたいな当事者が発信することにも、少しは意味があるのかなって思うんですよね。私はシンシアさんほどの影響力はないですけど、それでもSNSに書き込めば誰かは見てくれる。SNSでの発信に対して、ご家族がうつ病を患っているという人から「励まされています」とメッセージをもらうこともあります。

ずっと仕事人間だったけど、お金が発生しなくても、遠くにいる誰かのためになったり、社会の役に立てたりする。「仕事で認められないと!」とばかり思い込んでいた価値観が変わりました。

薄井シンシアさん&井上真理子さん
悩みを一人で抱え込まず、誰かに共有を
写真8枚

シンシアさん:真理子さんのそういう気持ちは、絵を見ると私には分かったから。だから、今この人に声をかけるべきだと思ったんですよね。

――シンシアさんの声のかけ方が真理子さんには適切だったということですよね。励ましの言葉を投げるのではなく、前向きな活動に誘ってみる、期限を切らずにゆるく約束する、といった工夫の効果を感じます。

シンシアさん:相手の負担にならないように考えることが大事ですね。だから、最初からこちらの事情もオープンにしていました。「あなたの絵を飾らせてほしいけど、うちは画廊じゃないし、急いでいません。今は別のかたの絵が飾ってあるし、いつまでに入れ替えないといけない性質のものではないので」って。

真理子さん:シンシアさんはSNSで企業トップとして発信されていることは時に手厳しいかもしれませんが、DMでいただくメッセージは温かくて。実は、人へのお気遣いもすごくされる方なんですよね。こんなシンシアさんがやろうとしていることなら、私も微力ながらやらせていただきたいと思いました。

◆LOF Hotel Management 日本法人社長・薄井シンシアさん&井上真理子さん

薄井シンシアさん&井上真理子さん
薄井シンシアさん&井上真理子さん
写真8枚

薄井シンシアさん/1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う大学のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラ社に入社し、オリンピックホスピタリティー担当就任するも五輪延期により失職。2021年5月から現職。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

井上真理子さん/大学卒業後看護師としてキャリアをスタートさせ、看護師経験10年を経て美容業界に転身。美容専門学校教員、ヘアメイク講師、フリーランスヘアメイク、エステサロン受付、注文住宅営業、製薬会社プロジェクト立ち上げ等経験。現在はフリーランスとして経営者の業務サポートや、マネジメント、企画・運営などを担当。

撮影/黒石あみ 構成/赤坂麻実、編集部

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