犬や猫と一緒に暮らす人にとって、避けて通れない道。それが老いです。「人間よりも寿命が短い」と理解しているつもりでも、「そんな日は来てほしくない」とついつい考えてしまいますよね。お笑いコンビ・エレキコミックのやついいちろうさんは、10年前にとあるパグと運命的な出会いを果たし、以来「こぶし」と名付けて一緒に暮らしています。そして長い月日が経つにつれ、こぶしの“終活”と向き合うようになってきたのだとか。2022年6月には、こぶしとの日々を綴ったエッセイ『うちの犬がおじいちゃんになっちゃった 愛犬こぶし日記』(カンゼン)を出版しました。
10年一緒に過ごして見えてきたこと
2011年12月にやつい家にやってきたこぶし。それまでペットを飼うことに興味がなく、カブトムシくらいしか飼ったことがなかったというやついさんが、はじめて迎え入れたパグの男の子です。リードを取り出すだけで喜ぶほどの散歩好きだったり、いろんなものを“破壊”しがちだったりするそうで、なかなかやんちゃみたい。
ただ、やついさんからすると、そんなこぶしが愛おしくて仕方がない! エッセイを読むと、「ペットを飼うつもりはなかった」と言っていたのが嘘のようにニコイチで暮らし、寄り添い合っているのが伝わってきます。
その一方で、こぶしがヘルニアを患った日のことや、やつい夫妻が新型コロナウイルスに感染したときに起きたこぶしの異変、さらに老いを感じた瞬間なども詳しく紹介し、そのときの心情を綴っています。ここから感じるのは、やついさんが命と真剣に向き合っているということ。いずれくる“その日”が、いつどんな形できてしまうかわからないからこそ、悲しみをたたえつつも前を向いているのです。
絆が伝わるやついさん&こぶしの2ショット
同書内には、やついさんとこぶしの写真も複数掲載されています。
やついさんがこぶしの顔を抱えているカットは、目を閉じて気持ちよさそうにしているこぶしの表情が印象的。やついさんが着ているTシャツのキリッとしたパグの顔とは対照的。そんな姿が収められています。
ご主人さまに抱きかかえられたカットでも、やっぱり気持ちよさそう。どこに連れて行ってくれるのかと、目をパッチリと開いてあたりを眺めているこぶしの姿も紹介されています。
ベンチに座ったやついさんと、リードにつながれたこぶしのカメラ目線をとらえた1枚は、明るい日差しも相まって温かなカットになっています。
家の中で、見つめ合うふたりを収めた写真は、距離感も近くお互いへの信頼が伝わります。きっと、いつもこんなふうに一緒にいるのでしょうね。
ペットと一緒に暮らす人たちは特に考えさせられる同書。温かくも切ない言葉の数々が印象的な一冊です。