感性磨きへの投資と運動習慣で歳を重ねることが怖くなくなる
バイタリティあふれる西さんにも、気持ちが沈んで落ち込んだ時期があったという。
鬱々とした気分から抜け出したきっかけ
「更年期の始まりと家を購入してローンを抱えたプレッシャーが重なって、女性ホルモンのバランスが乱れたのでしょうね」
その頃、西さんは大好きなドライブで、車のミラーに映る自分の顔を見るたびに「老けたなあ」と憂鬱になったという。何をしても楽しく感じられなくなり、目の前の景色がガラッと変わったように感じたそうだ。しかし、この鬱々とした気分から抜け出せたのは、意外なことがきっかけだったと語る。
「車のミラーの色を薄いブルーから薄いピンクに交換したの。そしたら、くすんでいた顔色がパッと明るく見えて、たちまち元気が戻ったの。『気の持ちよう』とは言ったもので、たったそれだけで、人間の気持ちってガラッと変わるんです。おしゃれも一緒。年齢を重ねることを『老化』ではなく『成長』と思うようにしました。成長したわけですから、新しく似合うようになる服や色が必ずある。似合わなくなったものがあることを嘆くより、新しい自分を探すことの方が断然楽しいです!
やった分だけ体や心にプラスとして積み上がっていく
それから、この時期には、美術展や歌舞伎、オペラに行くなどして、感性を豊かにしてくれるものにせっせと投資しました。美しいもの、素晴らしいものに触れて感性が磨かれれば、若さとサヨナラしても怖くないと思ったの。あと夫とテニスをしたり、スクールに通ってヒップホップを習ったりもしたわね」
現在はストレッチと8000歩のウォーキングが日課だという西さんだが、70歳を超えた今、人生の折り返し地点から積み重ねてきた、感性磨きと運動の習慣が、薄いベールを1枚ずつ積み重ねていくようにして自分を守ってくれていると実感している。
「『今日は疲れているからいいや』って思うときもあるけれど、やった分だけ体や心にプラスとして積み上がっていくのがわかるから、やめないの。これは運動だけじゃなく、なんでもそうなのかなと最近思います」
◆スタイリスト・西ゆり子さん
にし・ゆりこ。スタイリスト。テレビ番組におけるスタイリストの草分け的存在で、ドラマスタイリストとしてテレビドラマと映画およそ200作品を手がける。2019年度「日本女性放送者懇談会50周年特別賞」受賞。現在は、一般個人向けに「CoCo Styling Lesson」や、無料でスタイリングの知識を得られる「着る学校」(https://www.stylingschool.org)というコミュニティも展開。近著に『ドラマスタイリスト西ゆり子の 服を変えれば、人生が変わる』(主婦と生活社)。
撮影/五十嵐美弥 取材・文/森冬生