母を施設に入れて半年も面会に行ってなかった
しばらくバトったけれど、埒があかないので一人で母親のいる施設に見舞いに行くというと、渋々、姉もついてきた。車の中で姉は、「行ってもどうせあんたのことなんかわからないと思うよ。私のことだってわからないことがあるし」と引き止めるようなことを言ったかと思えば、「毎週、着替えを家に持ち帰って洗濯をして施設に戻すの、大変なんだから」と、いかにもせっせと施設に通って世話をしているようなことを言う。
「ところが施設に着いたら職員さんから、『お母さん、お持ちかねですよ』と言われちゃった。あとでわかったことだけど、姉が自宅で介護したのは10日たらず。施設に入れて半年間たっても面会になんか行ってなかったのよ。それも腹が立つけれど、マンションのことも知りたい」
それを言うと姉は、「……」。無言。「売れたか売れてないかだけでも教えて」と言っても前を向いたまま、聞こえないふり。「部屋、リフォームしたんだね」と言ったときだけ、口をパクパクしたけど、結局は無言。
マンションを売ったお金は使い果たしていた
話にならない。何度か「ざっとでいいからお金の出入りでいいからはっきりさせて」とLINEで送ったがなしのつぶて。とうとう弁護士を間に入れることにした。
「姉は若い頃、銀行に勤めていたのよ。だからお金にキチンとしていそうだけどこれまで実家住まいで何十年も家の光熱費すら負担してない。それどころか、自分と娘の生活費も小遣いも親がかり。おんぶに抱っこ肩車。
それを姉は妹の私に知られたくない。親は親で跡取り娘の姉の言いなり。それでも跡取り娘らしく老いた親の介護をするなら、辻褄はあったのよ。でも実際に寝たきりになった母親を介護してみたら、とてもできない。
それでさっさと施設に入れて、私と共有名義だったマンションを売り払ったお金は家のリフォームと高級家具とブランド品を買いまくってほとんど使い果たしていたわけ。姉は母親を施設に入れたタイミングでマンションが売れ、大金がはいってきて気が大きくなって使い込んでしまったと言っているらしいけど…」
両親の年金があるにはあるけれど、それだけじゃ親の面倒をみるには足りない。姉は最近になってビルの掃除のアルバイトを始めたと言うけれど、だからといって納得できるわけじゃない。老いた親を”人質”にとって奪ったマンションの売却額1900万円の半分は戻してほしい。
「親が健在なうちは、姉相手に訴訟は起こしたくないけど、向こうの出方次第ではやるしかないと思っているの」
そう言うと美人だったK子は鬼の形相になった。
ただでさえ切ないことが多い親の介護なのに、長年のきょうだい間の葛藤まであからさまになったらどれほどストレスが大きいか。聞いているだけで胃が痛くなった。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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