
初対面の相手やまだ関係の浅い相手と雑談をする際、好感を与えながらスムーズに雑談を進めるにはどうしたらよいのでしょうか。聞き方や話し方に関する著書が多い雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さんの著書『すごい雑談力』(秀和システム)には、雑談に関するノウハウが満載。その中から、アドバイスをいただきました。
相手の名前を呼ぶことで好感度と親近感がUP
まず雑談を始める前に覚えておきたいのが、好感や親しみやすさを持ってもらうための、こんな心構えです。
例えば、「今日は天気がいいですね」といった何気ない会話一つとっても、「○○さん、今日は天気がいいですね」と、相手の名前を差し込むこと。

「かつてパーティーで名刺交換をした著名人が、100人近くと名刺交換をしていたにもかかわらず、会場を出る際、初対面だった私の名前を呼んでくれたことがあります。非常にうれしく、感激し、ますますその方のファンになりました。
相手の名前を覚えて、口に出す。たったこれだけで親しみと好感を持ってもらいやすいのだと、実感しましたね。実際に成功者ほど、相手の名前を覚え、よく呼ぶように心がけているようです」(松橋さん・以下同)
何かを伝えたいとき、ポイントは3つまでに
次に、雑談のきっかけとなる自己紹介では、どう話すとよいでしょうか。
「あれもこれも話すのではなく、ポイントを3つまでに絞ると、より相手の心に残りやすくなります」と松橋さん。
人は一度に言われた話の中で、3つまでのことしか印象に残らないことが多いからです。
例えば、「初めまして。○○(名前)と申します。子供は○才の子が1人いますが手が離れているので、趣味の活動にも存分に打ち込めます」といった内容なら、名前、家族構成、趣味に使える時間の3テーマしかなく、聞く人の頭にもすんなり入ってくるでしょう。

話を広げたいときは「5W3H」の質問を
さて、自己紹介も終わり雑談がスタート。相手が何気なく話した内容に対し、「いいですね」で終わらせてしまい話が続かない、と悩む人もいるでしょう。そんなときのために、相手に投げ返す“ボール”を複数持っておきたいところ。松橋さんは、「5W3H」の質問を頭に入れておくことを提案します。
【1】When(いつ)
【2】Where(どこで)
【3】Who(誰が・誰と)
【4】What(何を)
【5】Why(なぜ)
【6】How(どのように)
【7】How many(どれくらい)
【8】How much(いくら)
例えば、話しの流れで、相手が夏休みの旅行の話をしてきたとき。
「あら、いいですね。楽しんで行ってらっしゃい」と返してしまえば、会話のキャッチボールはそれで終了。「どちらまで?」「ご家族で?」などと、「いつ」「どこ」「誰と」「どれくらい」の「5W3H」から適宜質問を拾うとよいでしょう。

より掘り下げることで話はどんどん広がる
内容によっては、「具体的には?」「例えば?」「…というと?」など、より掘り下げて聞くと、話はどんどん広がります。
「友人知人との会話では、さまざまなことをあいまいにしながら話を進めていくことが多いでしょう。とりわけ、悩み相談のときにはあえてあいまいな部分には触れないことも。ただし雑談レベルの当たり障りのない話の内容なら、気になったことは5W3Hの質問をすることで、より具体的で詳細な会話になり、話が広がります。ぜひ試してみてください」
ネガティブな話はそれ以上広げず、方向転換を
雑談が進むと、当たり障りのない内容から、思わぬ方向に話が進むこともあるでしょう。
「夏休みは夫の実家に顔を出さないといけないの。義父母とは仲が悪いから、気が重いわ…」「コロナに感染するのが怖くて出かけられないの」――などなど。また、悲しいニュースの話に飛んだり、相手の愚痴が延々と続くこともあります。
ポジティブな気持ちを引き出す質問を
こうした局面で「5H3W」で話を広げるのは、考え物です。聞いているこちらの気持ちまで暗くなる、愚痴や不幸の自慢大会になるなど、雑談がネガティブ一色になりかねません。こうした“ネガティブ沼”から抜け出すためには、思い切って方向転換をしましょう。

松橋さんは、「相手の楽しかった話、うまくいったときの話、うれしかったときの話など、ポジティブな気持ちを引き出すような質問を投げかけましょう」と、提案します。
例えば、「自分の時間ができたら何をしたい?」「コロナが落ち着いたら、どこに出かけたい?」「これまで夏休みはどんなところに行っていたの?」など。
こうした質問が、話し相手がもともと持っているポジティブな力を呼び覚ますきっかけになるのです。その結果、相手の表情も明るくなったら、こちらも下がっていた気持ちが上がってくるでしょう。
「お年寄りは得てして昔の自慢話を何度も繰り返し話します。それは、精神衛生上とてもいい効果があるのです。もし相手が同じ思い出話ばかり楽しそうに話していたら、『それ、前も聞いたよ』などと水を差さず、何度でも楽しい気持ちに浸ってもらいましょう。相手が楽しい気持ちになれば、雑談は成功したといえます」

◆教えてくれたのは:雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さん

雑談コミュニケーション専門家、コミュニケーション総合研究所代表理事。営業マン時代、強度の人見知りで、コミュニケーション、特に雑談が大の苦手だったが、心理学を学び一転、全国450人中1位のセールスマンとして活躍。学んだ心理学の手法をもとに、聞き上手・話し上手な営業マンとしてトップセールスを誇る。現在は独立し、聞き方、話し方の専門家としてメディアや講演会などで活動。『すごい雑談力 25万人が自信をつけた話し方・聞き方のルール』(秀和システム)など著書は20冊以上。https://www.nlp-oneness.com/