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伝説の「大雨」西武球場ライブから33年!夏は渡辺美里でパワーを補充したい

『My Revolution』はデビュー4作目のシングルだった
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1980年代半ばにデビューして以来、シンガーソングライターとして第一線を走り続ける渡辺美里(56歳)。1980〜1990年代のエンタメ事情に詳しいライター田中稲さんが、代表曲『MY Revolution』のほか、「夏が似合う」渡辺美里の楽曲の魅力を語り尽くします。

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「雨のバカ—!」

気がつけば夏休み突入。心にも体にもビタミン補給をして、この険しいにもほどがある暑さを乗り超えたい! ビタミン補給といえばフルーツ。夏バテに効くフルーツの代表と言えばパイナップル。そしてパイナップルといえば渡辺美里!!

ものすごく個人的な連想ゲームになってしまったが、言い切ろう。私の中で渡辺美里さんは、歌うパイナップルなのである。もちろん、とびきりジューシーな! パイナップルのようにボリューミーなヘアスタイルの印象が強いというのもあるけれど、太陽に愛される花とか果実とか、そんな実りを感じる人なのだ。

7月末になると彼女の声を聴きたくなる理由がもう一つある。1989年7月26日 、西武球場で行われたコンサート「SUPER Flower bed BALL ’89」の映像。それを初めて見たとき圧倒されたのだ。物凄い迫力で!

コンサートツアーは全国6か所7公演が行われた(写真は1989年、Ph/SHOGAKUKAN)
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「映画の撮影!?」と思うほど非現実な量と勢いで叩きつける雨。その中、彼女とオーディエンスがビッショビショになりながら『パイナップルロマンス』を歌っているものだった。

だだだ大丈夫なの? 落雷とか心配……。ヒヤヒヤしていたのも最初のうちだけで、次第に、雨の神と雷の神を従えて彼女がパフォーマンスしているように見えてきたのだった。

なんだろう、発光している!

豪雨による中止が伝説を生んだ(写真は1989年、Ph/SHOGAKUKAN)
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『My Revolution』が起こした革命

思い返してみれば、私は渡辺美里さんにビックリばかりしている。歌っている姿を初めて見たときも衝撃だった。まさに瞳キラッキラのアイドル的なルックス。ところが歌い出すと、「なんだなんだ!」と身を乗り出すような歌唱力モンスター。ハスキーで壮大で、未知のジャンルの人がいきなり登場した感じだった。

1986年といえばおニャン子全盛の一方で本田美奈子さんの『1986年のマリリン』もあり、歌謡界はちょうどターニングポイントを迎えていたともいえる。純アイドル路線とアーティスト志向が交差していた。

ただ、そんな中でも『My Revolution』が異質だったのは、そのボーダーレス感。恋の歌にもとれるし、自分と向き合う歌にもとれる。さらに「私とあなた」ではなく「君と僕」の世界で、歌の主人公の性別はどっちともとれる。その「君と僕」は目線が一緒。それまでのアイドルソングは恋や社会で生まれる格差の反発や諦め、主導権の奪い合いみたいなのが少なからずテーマにあったけれど、この曲にはそれがない。共に成長し、恐れも涙も夢も全部ひっくるめて伝えていこう、と誓うのだ。どこまでもフェア!!

これを歌う美里さんの歌声も、歌唱力モンスターではあるけれど、老成している感じはなくて、ちゃんと等身大。とにかく全方位、奇跡的なバランスで響いてきた。今聴いても新しい。昭和の歌に聴こえない!

『My Revolution』のボーダレス感は新鮮だった(写真は1989年、Ph/SHOGAKUKAN)
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