プレミアムグリーン車で再び
と思うとすぐにリターンマッチをしたくてたまらないのが私。しかも初回よりもグレードアップして。と、この性分のおかげでまともな人生から脱線しっぱなしだけど、ふふふ、昔から「裏を返す」のは遊び人の定石ではないですか。
翌週、名古屋の酉年女、ユミちゃんと熱海で気晴らししようと話がまとまったとたん、私は心に決めたわけ。また格安でサフィール踊り子号に乗ってやれ。ええ~い、どうせ大人の休日倶楽部ジパング会員だから今回も3割引きだ、いっそプレミアムグリーンで行っちゃう? と。
翌日、暴走オバを乗せてサフィール踊り子号は出発進行! プレミアムグリーン車は運転席と前景が一望の一号車で横2列。横3列のグリーン車でもかなりゆったりした感じだけどさすがプレミアムだわ。まるで動く社長室よ。
最前列は中年夫婦で私は2列目。隣は鉄オタ高校生で、前のご夫婦と3人家族旅行なのね。鉄オタくんはやたら信号機に詳しくて得意げにママに説明しているかと思えば山側の私が海の車窓の写真を撮ろうとしたら体をズラしてくれたりして。オタクくんってちょっと偏屈なところがある子がいるけれど、そいう子も同じ趣味の人間には根っから優しいのよね。
で、肝心のプレミアムの乗り心地はというと、そりゃもうその上で最高ランクのプレミアムだもの。いいに決まっているわよ。が、どれだけいいか、どんな風にいいか聞かれたら、さあ、困った。悲しいかな育ちの悪い私は表現する術を持ちませぬ。
それにしてもユミちゃんと泊まった山奥のホテルから見た朝焼けは、息を呑むほど美しくてリゾート気分満点。母ちゃんのことを思い出してふさいでいた気持ちが嘘みたい。
こんなことを言ったらナンだけど、自分の体が自由にならない年寄りが家の中にいると、玄関を入ったときに独特のにおいがして、介護者はそれがたまらないのよね。特に”大惨事”を起こされると鼻腔に残る。それを一掃するには短時間でもいいから旅! そんなことをして自分を保っていたんだなと、母ちゃん亡き後に思い出したのでした。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【313】母ちゃんには理解できなかった私のライター稼業、「マジメに働け」と言われたことも