「足りないもの」ではなく「すでにあるもの」に目を向ける。
「年をとると仕事がなくなる」のは、若い人と同じ土俵で仕事を奪い合っているから。一般的な求人枠に自分を当てはめようとすると、「若くないのに経験もない」「体力がない」と足りないものばかりが目につき、選択肢は少なくなってしまいます。
「社会優先の生き方から、自分優先の生き方にシフトするためには、逆の発想が必要です。すなわち、“足りないもの”ではなく、“すでにあるもの”に目を向けるのです。仕事の資格や経験だけではありません。専業主婦が長く仕事歴がない人でも、コミュニケーション力、問題解決力、リサーチ力など、本人も自覚していないことが、実は大切な資産なんです。つまり、“老い”も資産です。
私の知り合いでも、50代でヨガを始めて、60代でインストラクターになった女性がいます。老いの体に精通しているため、中高年に合ったヨガを教えてくれると人気です。若い人よりも、経験というアドバンテージを持っているのですから、誰にでもできるような仕事を奪い合っている場合ではありません。50代、60代、70代と、その年代なりの闘い方があります」
「こんなことしかできない」という発想を転換
老後のライフスタイルは、20、30年前と大きく変わり、「これまでの価値観が通用しない」と有川さんは言います。
「かつて、定年を過ぎたら貯金と年金でのんびり暮らす、ということも可能だったかもしれません。ですが、老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられ、60歳以降も働くことが当たり前になりつつあります。人生100年時代といわれて老後が長い。だから“私はこんなことしかできない”というような思い込みをやめて、発想を転換させ、自分を花開かせる方法を考えていきましょう」
◆教えてくれたのは:作家・有川真由美さん
化粧品会社事務、塾講師、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの転職経験を生かし、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室「暮しの質」向上検討会委員(2014年・2015年)。今年5月、50歳からの生き方について指南した『50歳から花開く人、50歳で止まる人』(PHP研究所)を出版。
取材・文/小山内麗香