健康・医療

介護で必要になる「強い力」を引き出すコツは古武術にあった 理学療法士が解説

負担が軽くなる!介護で使える楽ワザ

体に負担がかかりやすい介護の場面で使える楽ワザについても聞きました。

「倒れる力」を利用する

介護でベッドや車椅子からずり落ち、立ち上がらせることは最も困難な場面です。腕の力だけで力いっぱい引き上げようとすると、腰を痛めることが少なくありません。

「コツは、『倒れる力を有効に使う』ことです。

床に座った人を立ち上げるなら、両足を肩幅に広げてしゃがみ、相手の骨盤に両手を回します。ポイントは、自分の腕を自分の膝で挟むことです。

床に座り込んだ人を立たせる楽ワザ。両足を肩幅に広げてしゃがみ、相手の骨盤に両手を回す。このとき、自分の腕を自分の膝で挟むのがポイント
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続いて後ろに倒れながら、自分のお尻を突き上げていきます。後ろに倒れる力と、上方向に立ち上がる力が合成され、斜め後ろ方向の力が出せます。この力を利用することで、腕の力をほとんど使わなくても、相手を起き上がらせることができます」

後ろに倒れ込みながらお尻を突き上げていく。ななめ後ろ方向に力が出せる(※少しでも腰に負担がかかったら、すぐに中止を)
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このとき、“滑り台を下から上に滑らせるイメージ”で行うと、バランスよく「倒れる力」を引き出せるそうです。

腕の力をほとんど使わずに、相手を自然と起き上がらせることができる
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※少しでも力任せになったらすぐに中止しましょう。

◆教えてくれたのは:理学療法士・岡田慎一郎さん

理学療法士・岡田慎一郎さん
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1972年茨城県生まれ。理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。JAMSNET東京理事長兼事務局長。高齢者介護施設における身体介助法を模索するなか、武術研究家の甲野善紀氏と出会い、古武術の身体運用を参考にした「古武術介護」を提唱。近年は介護、医療、リハビリ、消防救命、育児、健康増進、教育などの分野で講演、執筆するなど多岐にわたり活動中。今年9月、『図解でわかる! 古武術式 疲れない体の使い方』(三笠書房)を出版。

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