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27年経っても色褪せないglobe『DEPARTURES』の威力 KEIKOの歌声は「流れ星の音」のよう

globeの4枚目シングル『DEPARTURES』(1996年)は200万枚を超える大ヒットに
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1995年のデビュー後、2000年代にかけてJ-POPシーンを席巻した音楽ユニットglobe。安室奈美恵や華原朋美、TRFら小室ファミリーの一員としての活躍はもちろん、2002年にはボーカルKEIKOと小室哲哉が結婚したことでも大きな注目を集めました。その後はKEIKOの病気療養やさまざまなトラブルもあり活動休止状態が長く続くglobeですが、昨年11月には「KEIKOがラジオで復帰」という嬉しいニュースも。ライター・田中稲さんが、今も色褪せないglobeの代表曲『DEPARTURES』の魅力を中心に綴ります。

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突然ですが、globe『DEPARTURES』(1996年)のサビがどうしても歌いたくなってカラオケで入れたはいいが、あまりの高さに眩暈がし、さらにはマーク・パンサーのラップパートを持て余し、マイクをゆらゆら揺らしつつ薄笑いを浮かべ時が過ぎるのを待ったという経験がある人、静かに挙手してください。(固い握手)仲間です!!

それでも、何度も挑戦したくなる『DEPARTURES』。初めて聴いたときは本当に衝撃だった。雪が降り積もる「しんしん」を忠実に再現しているような、イントロのピアノの音色。そこからボーカルのKEIKOが囁くように歌い出し、サビで一気に切なさが爆発する。さらにマークがラップで、想い出を脳内に巡らせる魔法をかけるかの如く、追い打ちをかけてくる。この最強の布陣! 歌わずとも、聴くだけで毎回、胸が張り裂けそう。息も絶え絶えである。

そもそも作曲の小室哲哉さんは、日本屈指の美しいイントロ&歌い出しを作る職人。この人はいつもいつも私を最初から泣かせてくる。

恐ろしくドラマチックなピアノから始まる『Get Wild』にしてもそう。映画『ぼくらの七日間戦争』(1988年)の主題歌で、宇都宮隆さんのやさしい声から始まる『SEVEN DAYS WAR』(TM NETWORK)もそう! 小室さんの「歌の始まり」は、一番心が痛かったけれど一番自己陶酔もできたあの恋、あの青春へと誘ってくれる。『DEPARTURES』の威力はそのなかでも最強レベルだ。

この曲はJR東日本のスキー旅行キャンペーン「JR Ski Ski」のCMソングになりメガヒット(ダブルミリオン!)。歴代の「JR Ski Ski」CMソングは他にも、同じくglobeの『Can’t Stop Fallin’ in Love』や、GLAYの『Winter, again』、ZOOの『Choo Choo TRAIN』、松任谷由実の『BLIZZARD』など、往年の名曲揃いである。

限界突破で伸びていくKEIKOの歌声

globeというユニット名は「地球」を英訳したものだが、私の彼らに対するイメージは、どちらかというと宇宙。スコーンと限界突破で伸びていくKEIKOさんの声のせいだろう。天体から降り注ぐ流れ星の音を私は聴いたことがないけれど、あったらきっと彼女の声のような音だと思っている。

長年、病気療養していたKEIKO(写真は1996年、Ph/SHOGAKUKAN)
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私の知人に「邦楽はほぼ聴かないが、B’zの稲葉浩志とglobeのKEIKOの声の色気だけは認める」と言っていた人がいる。アンタは何様なのかとツッコミたくはなったものの、「色気ある声の歌手の代表」としてこの二人の名を出したのは、悔しいが納得できる。

二人とも、歌唱力はもちろんすごいが、伸ばしたときのカスれ具合、しゃくりあげるような切なさの爆発がたまらない! 疾走感と緊張感に最先端を感じるのに、湿気たっぷりの余韻も襲いくる。

ちなみに私のglobeベスト3は、1位『DEPARTURES』、2位『Wanderin’ Destiny』、3位『DON’T LOOK BACK』。どうやら、追い詰められた感溢れるglobe曲が好きなようである。

『DON’T LOOK BACK』は当時大好きだったドラマ『ストレートニュース』(日本テレビ系・2000年)のオープニング曲だった。ところがフルで聴くと、なかなかドラマで流れる部分が出てこない。それもそのはず、なんと9分近くも尺があり、いろんな素材がこんがらがって奇跡的に立っているお城みたいなイメージの曲だった。こんなに長く、しかもディストピア感が強いのに、クセになる。個人的な小室哲哉さんのヤバい曲ランキングでは堂々第1位である。

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