スキルがあれば異業種転職は難しくない
目的が決まったら、作戦を立てる。今回の私のやり方は、労働市場の動向をメディアや求人サイトからつぶさに読み取って、人気の仕事ばかりを選び、時間をかけてじっくり企業研究をしてから応募し、提出書類や面接で話す内容を一社一社に合わせてカスタマイズし、採用を勝ち取るというもの。
人気の仕事ばかりを選んだのは、63歳になっても、労働市場から求められる人材になれることを証明したかったからです。転職エージェントもキャリアコンサルタントも「50代の転職に強い」ようなことを売り文句にする人は多いですが、60代の転職のことは誰も言わない。高齢化社会が到来し、一方で人手不足にあえいでいる今の日本で、いまだに60代人材のニーズが弱いのはおかしな話だと私は思います。
新しい業界に飛び込むほうが成長につながりやすい
応募先の選び方として他に、やはり自分の強みが生かせる仕事をということで、英語力が生きる外資系企業を選びました。業種はさまざまです。ホテルで働いた経験が豊富ならホテル業界で転職するのが一番賢いと考える人もいると思いますが、それは違います。同じ業界で転職を繰り返すより新しい業界に飛び込むほうが成長につながりやすいし、報酬が大幅に上がる可能性も高まります。
まっとうな企業は、自分たちがどんな仕事をする人材を雇おうとしていて、その仕事にどんなスキルがどのレベルで必要なのか、求人情報にしっかり織り込みます。そのスキルさえ自分に備わっていれば、同じ業種の企業で働いた経験がなくても応募できるし、気後れすることもありません。
逆に、漠然と「コミュニケーションスキルが高い人」などとしている求人は見送ったほうが無難です。自社にどういう人材が必要か具体的に説明できない企業は、実際に雇用した人材の活用もきっと下手です。
自分のスキルを棚卸しして応募書類は一社ごとにカスタマイズ
応募先が決まれば、履歴書や職務経歴書を用意します。企業側が求める人材・スキルを明示しているのですから、自分はそれにマッチしているのだと、説得力をもって伝えられる書類を作る。どの採用にも通用する万能な書類はないので、使い回しはありえません。自分が経験したこと、身に付けたスキルを、企業の求めに合う形で語る必要があります。
例えば、私が前職でした仕事は、ホテルを開業すること。その事業には、事務機のリース、清掃やごみ収集などの事業者と契約を結ぶという業務も含まれます。いわゆるベンダー・ネゴシエーションを経験したといえる。このスキルはホテル業界でなくても役に立ちます。他に、オンラインの旅行代理店などと折衝して販売チャネルを作ったり、もちろん、ホテルという施設のマネジメントをしたりしました。このように、過去の仕事をスキル単位に分解して、応募先が欲しいスキルにポイントを置いて応募書類を作ります。