ただ、実はこの作業が苦手な人が結構います。自分が在籍した企業や部署、役職、携わった事業を並べ立てることはできても、そこから何を得て、だから転職した先ではこう役に立てるとストーリーを語れないというのです。自分が携わった事業のなかで具体的に何をしたか、それをスキルにブレイクダウンするとどうなるかが分からないのだと。
ジョブ・スクリプションを書くことの意義
これは無理からぬことです。日本の多くの企業はジョブ・ディスクリプションを用いないからです。ジョブ・ディスクリプションは、担当する業務の内容や範囲、必要なスキル、難易度などを詳しく記した文書です。これがあるとその仕事がどんな作業、スキルで構成されているのかが分かります。
私は専業主婦になったときも、専業主婦のジョブ・ディスクリプションを書きました。家族に1日3食提供するとか、週に1回お風呂を掃除するとか。自分が何をもって専業主婦であるといえるのか、業務を明確に定義しました。それをこなすことで自信が生まれるし、自分にできることが明らかになって、次の仕事や活動にも生かしやすくなります。
ですから、これまでジョブ・ディスクリプションに接してこなかった人も、就職活動をするに当たって、自分の過去の活動や仕事についてジョブ・ディスクリプションを書いてみるといいと思います。今から他の人に同じ仕事をしてもらうとしたら、具体的にどんな作業、工程、スキルが必要か、誰にでも分かるように書き出してみる。そうすると、その仕事をやり遂げた自分にどんなスキルが備わったか明確になりますよね。
自分の手持ちのスキルを棚卸しできたら、あとは、応募先企業の求めるスキルを強調した書類を作るだけです。
次回の後編では、採用面接で語るべきこと、相手企業を見るポイントなどをまとめます。
◆薄井シンシアさん
1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社し、イベントマネジャーとして活躍中。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia
撮影/黒石あみ 構成/赤坂麻実
●薄井シンシアさんがキャリアブレイク中のアラフォー主婦2人と鼎談 「生き方は1つじゃない」「周りに流されず好きな道を選ぶべき」