母ちゃんから言われたドキッとした言葉
そういえばちょうど1年前に亡くなった母ちゃんは、元気なころはさんざん「死んだら何もわかんなくなるんだから、かまねな(かまわないよ)」と言っていたけれど、私が布団を並べて寝て介護をした最晩年は、「死ぬ」とか「死んだら」と言わなくなったの。それは私にとって救いだったけれど、一度だけ、ドキッとしたことがある。
亡くなる3か月前のこと。靴下の足首のゴムがキツイというんで、アキレス腱のところにハサミを入れてやろうしたら顔色を変えて、「おれは仏様じゃねぇど。そんなところを切るのは仏様になってからにしてくろ」と怒り出したんだわ。
「わかった。じゃあ、もっと足首のゆるい靴下を買ってくっから」と言ったら黙ったけど、後にも先にも妙なことを言ったのはこの時だけ。今にして思えば、母ちゃんは死に装束の足袋を連想したんだよね。
とかなんとか言っていられるのは私がこっち側にいて、まだまだ時間があると思っているからなんだよね。もうひと踏ん張り、いや、ふた踏ん張りしないとね。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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