「アンチエイジングをするなら『まずは口から整える』ことが大切」──『歯と口を整えるアンチエイジング』(ビジネス社)の著者で歯科医師・歯学博士の生澤右子さんはそう指摘します。体の内部はもちろん、見た目も若々しく保つことがアンチエイジングでは重視されますが、それは「歯と口」も同じ。老け顔に見えやすい「黄ばんだ歯」をホワイトニングするメリットについて、生澤さんに聞きました。
人の印象は「口元」で決まる
人の印象が「口元」に左右される──それには、脳科学的・文化的な理由があると生澤さんは言います。
他人は前歯を「顔の一部」と見ている
「日本ではあまり意識されていないようですが、他人はあなたの前歯を“顔の一部”として認識しています。
ある調査によると、日本やアメリカ、ドイツなど6か国の成人男女に、自分の歯に自信があるかを聞いたところ、日本で歯に自信がある人はわずか13%でした。6か国の平均は54%で、大きく下回る結果となりました」(生澤さん・以下同)
その反面、日本人は「歯がきれいな人は仕事ができそうに見える」と60%の人が回答しているそうです。
口元は「信頼」にもかかわる
人が無意識のうちに「どこを」「どれだけ」みているかを調べた研究では、「歯並びの良し悪し」が視線を引き付け、しかも「歯並びの悪い笑顔」ほど長く見られることが判明しているそうです。
「また、あごが小さいと第一印象で信頼を得にくく、あごが広いと信頼を得やすいことがプリンストン大学の研究などでわかっています。
人が顔を見る時、口はとても重要なパーツです。歯並びやあごの幅も見て、信頼できるかどうか瞬時に決めています。口元はかみ合わせや見た目だけでなく、人として信頼されているかという、他人の“無意識の認識”の中でも、とても大切なのです」
見た目を左右する「歯の色」も大事なポイントです。
「白い歯」で好印象を
「アメリカ審美歯科学会がアンケートで笑顔に足りないものを聞いたところ、1番多かった答えが『歯の白さ』でした。実際、同学会は『笑顔をパワーアップするもっとも経済的な方法』としてホワイトニングを推奨しています」
日本の調査でも、「黄ばんだ歯」では「笑顔がくすんで見え、男女とも3歳老けて見える」との結果が出ているそうです。そもそも、歯が黄ばむ原因はなんでしょうか。
歯が黄ばむ原因
「年を重ねて歯の色が黄色くなったり、暗くなったりしていく原因は、歯の構造にあります。白くて硬い最表層のエナメル質の下は、黄色っぽい色の象牙質です。歯磨きや食事でだんだんエナメル質が削れて、より黄色い象牙質が透けて見えるようになります。
また、象牙質は内面からだんだん厚みをましていき、白が薄くなって黄色が厚くなっていきます」
コーヒーやワインなどの飲み物、にんじんやオレンジ、トマト、カレーなどの食べ物による着色や、タバコや歯の打撲なども、歯の色が変わる原因とのことです。
イメージする白は何か
印象をよくするためのホワイトニングは、ただ「白く」すればいいわけではありません。
「ホワイトニングをしたくなったら、自分がイメージする白さはどんなものなのか、はっきりさせる必要があります。
つまり、本来の歯の色にしたいのか、それとも歯を白色に近づけたいのかということです。ホワイトニングをすると(詰め物や被せ物などの)人工の歯と天然の歯の違いが目立ってしまうことがあります」
歯科医との相談で
本来の歯の色にしたい場合、歯磨き粉や歯科医院でのクリーニングで汚れ落としを行います。一方、さらに白くしたい場合は薬剤を用います。
「ホワイトニングの種類によって方法が異なるため、あらかじめ歯科医と話し合って、同じ認識にしておきましょう。ホワイトニングの副作用として一番多いのは、知覚過敏です。ホワイトニングの薬剤の使い過ぎは、エナメル質や歯ぐきを傷める可能性があるので、歯科医の指示に従いましょう」