
更年期の女性に多くみられる萎縮性膣炎。デリケートゾーンの不快感は相談しづらく、放置されているケースも多いようです。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは「萎縮性膣炎は、適切な治療と生活習慣の見直しで症状の改善が期待できる」と言います。そこで、自宅でできるセルフケアと意識したい栄養素、効果的な漢方薬について教えてもらいました。
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萎縮性膣炎とは
萎縮性膣炎とは、膣や膣の周りが乾燥し、雑菌が繁殖することで起こる疾患です。
膣は、女性ホルモンのエストロゲンの働きで細胞の入れ替わりが促され、病原菌が入らない仕組みになっています。また、膣内の善玉菌が細胞内の糖を材料に乳酸を産生し、膣内を酸性に保つことで、他の菌の繁殖を防いでいます。
しかし、更年期でエストロゲンの分泌量が減ると、膣自体や膣内の善玉菌の働きが弱まり、乾燥し、雑菌が繁殖しやすくなります。そのため、更年期以降は萎縮性膣炎を発症する可能性が高まるのです。アメリカの家庭医学会(AAFP)の報告によると、閉経した女性の40%が経験しているというデータもあります。

萎縮性膣炎の症状
萎縮性膣炎の症状はデリケートゾーン全体に起こり、ヒリヒリする痛み、焼けるような違和感、かゆみ、黄色いおりもの、おりものの増加、おりもののニオイの変化、出血、乾燥感、性交痛などが代表的です。
ただし、子宮がんでも出血や黄色いおりものはみられるので、これらの症状がある場合は、自己判断せずに産婦人科を受診してください。
萎縮性膣炎のケア
萎縮性膣炎は薬による治療以外にも、デリケートゾーンを清潔に保ち、乾燥から守ることで不快感の軽減が期待できます。どんなケアをしたらいいのか、具体的な方法をご紹介します。
デリケートゾーン専用ソープを使う
雑菌の繁殖を防ぐためには、デリケートゾーンを常に清潔に保つ必要があります。しかし、洗浄力の強いせっけんやボディソープでは、洗いすぎによって乾燥に拍車がかかる懸念もあるため、デリケートゾーン専用ソープの使用をおすすめします。

デリケートゾーン専用ソープは、一般的なせっけんやボディソープよりも低刺激に作られていて、潤いを必要以上に落とさないので、乾燥対策にも役立ちます。
デリケートゾーンを保湿する
また、乾燥を防ぐために必要なのは、やはり保湿です。
手持ちの化粧水や乳液、オイルを使用してもよいですが、しみるなどの不快感があるようなら、デリケートゾーン専用の保湿剤もあります。病院でも処方してもらえるので、心配な場合は専門医に相談しましょう。
萎縮性膣炎のケアにおすすめの食材&栄養素
ビタミンEは萎縮性膣炎の回復に有効との報告があります。そこでおすすめしたい食材がニラです。

ニラは豊富なビタミンEのほか、抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、ビタミンCも含み、ストレスなどのダメージから細胞を守り、細胞の新陳代謝を助ける働きも期待できます。
ニラは1年に3回収穫されますが、春のニラはとくに柔らかく、香りが強いのが特徴です。肉や卵と合わせて炒め物にすれば主菜になりますし、サッとゆでてマヨネーズやごま油、塩などで和えて副菜にするのもいいでしょう。

ビタミンEを多く含む食品は、ニラ以外にも、かぼちゃ、しそ、ほうれん草、ツナ缶、メカジキ、ハマチなどがあります。脂溶性ビタミンであるビタミンEは、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。炒めたり、油を含む調味料を使用したりして調理するといいでしょう。
萎縮性膣炎の治療にも処方されている漢方薬
萎縮性膣炎のような陰部の症状には、陰部の違和感や痛みなどの症状に対して産婦人科でも処方されている漢方薬の活用もおすすめです。
漢方では、陰部のトラブルは、ホルモンバランスの乱れや血流不足などが原因で起こると考えられています。漢方薬はそのような症状が起こる原因に働きかけるので、萎縮性膣炎など陰部のトラブルが起きにくい体質を手に入れることが期待できます。

萎縮性膣炎の悩みにおすすめの漢方薬3つ
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血行をよくして水分代謝を整えることで膣に栄養を届け、ホルモンのバランスを整える漢方薬です。貧血ぎみで体が冷えやすい人に用いられます。
・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
湿熱を取り除き、下半身の炎症を和らげる漢方薬です。排尿時の痛みや残尿感がある人に用いられます。
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
加齢による泌尿器の衰えに使われる漢方薬です。体を温めるので、下腹部の冷えが強い人に向いています。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。