更年期の女性が感じる胸の痛みの原因の1つに「微小血管狭心症」があります。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは、「微小血管狭心症の疑いがある場合は、まず医師の診察を受けるべきですが、日頃の生活で注意したいことがあります」と言います。そこで、微小血管狭心症とはどんなものなのか、また、予防のための生活習慣や食事、漢方について教えてもらいました。
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更年期の胸の痛みは「微小血管狭心症」かも
微小血管狭心症とは、直径0.5mm以下の微小血管に異常が起こる狭心症の一種です。通常は血管が拡張することで血液がスムーズに流れますが、何らかの理由で血管の拡張が妨げられると、微小血管狭心症が起こると考えられています。
発症する年齢は30代半ばから60代半ばが多く、動脈硬化による狭心症の発症年齢よりも若いことが特徴です。なかでも、40代後半から50代前半の更年期の女性に多くみられます。
微小血管狭心症の原因
微小血管狭心症の原因ははっきりしていませんが、血管をしなやかに保つ、脂質代謝を促し血管内にたまりづらくする、ストレスなどのダメージから細胞を守るなどの作用がある女性ホルモンの分泌が減少する年代の女性の発症が多くみられます。更年期を迎え女性ホルモンの分泌が減ることで血管が収縮しやすくなり、微小血管狭心症が発症するのではないか、という説が有力です。
また、40代後半から50代前半の女性は、仕事の役職や家族構成の変化など、公私ともにさまざまな問題を抱え、不調を感じやすい時期でもあります。ストレスも血管へ悪影響を与えるので、微小血管狭心症の誘因になると指摘されています。
更年期に胸の痛みを感じたら病院へ
微小血管狭心症の症状として、奥歯の痛み、あご下から耳の後ろにかけての違和感、喉の締め付け、息苦しさ、みぞおちの圧迫感や痛み、胸のあたりの圧迫感や痛み、などがあります。また、安静時に症状を感じる、不定期に発症する、30分~1時間ほど症状が続くという特徴もあります。
このような症状がある場合は自己判断をせずに、内科や循環器内科を受診しましょう。その際は、いつ、どんなときに、どんな症状が起こるのかを整理して伝えられると、診察がスムーズに進みます。
更年期の胸の痛みの予防法
血管を健やかに保つことが、微小血管狭心症の予防につながります。できることから始めてみましょう。
適度な運動をする
適度な運動は全身の血行を促進します。血管内皮にほどよい刺激が加わることで細胞が活性化され、強くしなやかな血管になります。
運動の強度は、深い呼吸ができる程度が目安です。座りっぱなしの時間を減らし、外出頻度を増やして、散歩や軽めのウォーキングなどを心がけましょう。
過度な飲酒や喫煙をやめる
過度な飲酒や喫煙は血管内皮を傷つけ、硬くすることがわかっています。微小血管狭心症による痛みや不快感、定期通院や投薬といったリスクを避けるためにも、飲酒や喫煙の習慣を見直しましょう。
ストレスを発散する
ストレスを感じたときに体内で発生する活性酸素は血管の内側を覆っている器官である血管内皮を傷つけるほか、自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させます。自分なりのストレス発散方法を見つけるようにしましょう。