本作を介することで変わる宮沢賢治作品の読後感
本作が描いているのは、あの宮沢賢治の名作誕生の裏側だともいえます。そこには大切な家族の死があり、それを前にした彼自身の中で形成される死生観というものがあったのでしょう。
そんな彼もまた、37歳という若さでこの世を去っています。この映画に収められているのは、彼が遺した想い(=作品)を、父である政次郎が後世へと繋げていこうとするところまで。
“父の視点”で捉えられた宮沢賢治の姿に触れたあとで手にする名作の数々は、これまでとは異なる読後感をもたらしてくれることでしょう。いま一度、『銀河鉄道の夜』を手にしてみたいと思います。
◆文筆家・折田侑駿
1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。https://twitter.com/yshun