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役所広司と菅田将暉が紡ぐ親子の愛 初共演作『銀河鉄道の父』で2人が見せた作品の深部へと導く”手堅すぎる演技”

役所広司と菅田将暉、各世代を代表する演技者に魅せられる

役所さんと菅田さんといえば、両者ともに日本を代表する俳優として異論はないのではないでしょうか。その豊かなキャリアを見れば一目瞭然。年齢が違うのですから経験値には圧倒的な差があって当然でしょうが、2020年以降の活動だけに注目してみても、いかにこの2人が日本映画界において重要な存在なのかが分かります。

国内外で高い評価を得た主演作『すばらしき世界』(2021年)で、役所さんは社会から逸脱してしまった一人の男の半生を体現してみせ、時代劇『峠 最後のサムライ』(2022年)ではオールスターキャストの中心に。成島監督とタッグを組んだ『ファミリア』でも“父”に扮し、主演俳優として作品の持つ社会的なテーマを背負いました。

映画『銀河鉄道の父』場面写真
(C)2022「銀河鉄道の父」製作委員会
写真8枚

一方の菅田さんは、小松菜奈さんとダブル主演した『糸』(2020年)や有村架純さんとダブル主演した『花束みたいな恋をした』(2021年)をヒットに導き、いまのこの社会を生きる若者の象徴的な存在を体現。『キャラクター』(2021年)に『百花』(2022年)など、主演を務めた話題作の公開が続き、今年の9月には月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系・2022年)の劇場版の公開が控えています。

映画『銀河鉄道の父』場面写真
(C)2022「銀河鉄道の父」製作委員会
写真8枚

そんな2人ですが、意外にも共演は今回が初めて。各世代を代表する俳優の交点に、この『銀河鉄道の父』はなっているのです。

作品世界の深部に導く2人の堅実なかけ合い

本作のことを“手堅い力作”だと先述しました。これを誤解を恐れずに言い換えるならば、“驚きの少ない作品”だというわけです。役所さんにしろ菅田さんにしろ、彼らの力量は知っていましたから。つまりは想定の範囲内。むろん、これはネガティブなものではありません。俳優同士の堅実なかけ合いは、観客の興味を演技そのものではなく、より作品世界の深部へと導きます。そこにいるのは、パフォーマンスを展開している役所さんと菅田さんではなく、政次郎と賢治なのです。

これによって私たちは、物語の世界にさらに深くのめり込むことができる。観客を「アッ」と言わせることばかりが俳優の仕事ではないのだと、改めて思い知らされます。勢いで押し切ることなく、丁寧に物語を紡いでいく――。役所さんはもちろんのこと、彼とこのようなやり取りをしてみせる菅田さんは、若くして円熟期に入りつつあるように思えてならないのです。

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