今年4月、1984年に発売された一世風靡セピアのデビュー曲『前略、道の上より』が、男性アイドルグループEBiDANにカバーされ話題になっています。一世風靡セピアといえば、俳優・タレントとして長年活躍する柳葉敏郎、哀川翔、小木茂光らを輩出した伝説の路上パフォーマンス集団。彼らがテレビに進出した当時の衝撃について、ライターの田中稲さんが振り返ります。
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約1か月前だろうか。YouTubeで、徳間ジャパン公式チャンネルによる一世風靡セピアの『前略、道の上より』オフィシャルMVがオススメであがってきた。
うおお懐かしい! 思わずクリックしたら、なんと再生回数1050万回以上。これは懐かしいだけでは済まされない。セピア色の思い出を掘り起こすしか!
興奮して仕事仲間に電話で連絡すると「懐かしいです。中学校の運動会の応援合戦で踊りました」と、目を細め遠くを見ているのがありありとわかるような「思い出し声」が返ってきた。
確かにシンプルだし、あの、空を押し上げるような「ソイヤ! ソイヤ!」のフリは、大勢で踊ると映えるだろう。なにより、気持ちいいだろうなあ——。かなり羨ましくなり、電話を切ってその場で一人踊ってしまった。
ソイヤッソイヤッ(手を突き上げる)!
一世風靡セピアは「粋の極み」
改めて『前略、道の上より』を見返すと、その企画力にほとほと感心させられる。まず、グループ名に「風靡」という難しい漢字が入っているのがキャッチ—だし、「セピア」というチームカラーの選択も見事だ。
曲もいい。よさこいと似た、心の奥のエネルギーを叩き起こすような、ジャパニーズ・パッション溢れるメロディー。そこに乗るのは、日本の移ろいゆく四季と自然、命の儚さをふんだんに盛り込んだ歌詞。粋の極みだ!
また、企画力とは関係ないが、メンバー全員の名前もいい。小木茂光さん=光り茂る木、哀川翔さん=哀しみ翔ぶ、柳葉敏郎さん=柳の揺れる葉、西村香景さん=香る景色、春海四方さん=春の海、松村冬風さん=冬の風、武野功雄さん=武士のいる野原……。どの方の名も風流なイメージが思い浮かぶではないか。
ところが柳葉さんは当時、「ジョニー」(しかもJonnyではなくJony表記)と名乗っていたそうだ。こんな美しいジャポニズムな世界観の一員にいながら、あえて「ジョニー」にこだわるとは、なんと可愛い若気の至りなのだろう。