
最近疲れが抜けない、ダイエットを頑張っているのになかなか痩せない、肌がいつも荒れている――。それは、内臓が冷えているのが原因かもしれません。無自覚に起こっている内臓の冷えと改善法について、『内臓を温めるという提案 代謝アップ×免疫力アップ× 血流アップ』(アスコム、監修:内科医・井上宏一さん)を上梓した理学博士で全国冷え症研究所の所長・山口勝利さんに教えてもらいました。
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内臓の冷えは大敵!コロナ禍で冷えた3つの原因とは?
約30年もの間、冷えについて研究してきた山口さんによると、コロナ禍での生活習慣の変容により、私たちの内臓は今冷え切っている状態なのだそうです。疲れやダイエットに悩む人だけでなく、原因不明の頭痛や肩こり、腰痛も内臓の冷えが原因の人が多いのだとか。

「健康な人は、内臓の温度(深部体温)が体の表面温度より1~2℃高く、37.2~38℃程度が理想です。この内臓の温度が下がってしまうと、コントロールする自律神経に負担がかかり、乱れやすくなります。温度の減少によって、内臓そのものの動きも鈍くなって代謝が落ち、免疫細胞の働きが弱ってしまいます。こうしてさまざまな体調不良が起こるのです」(山口さん・以下同)
現在は新型コロナウイルスへの感染対策は緩和してきたものの、生活の変化による内臓の冷えという大きなダメージが私たちの体に残っているのだそう。一体なぜ、現代の生活が内臓の冷えをもたらしているのか、主な3つの「コロナ負債」について知りましょう。
運動不足による筋力低下
1つ目は、長期的なテレワークなどの影響から起こった、運動不足による筋力の量と質の低下です。
「運動をすると筋肉を動かすことにより、熱が発生し、その熱が筋肉に張り巡らされている血管から全身へと、血流に乗って運ばれます。しかし運動不足になると、筋肉が熱を発生する機会が減る上に、筋肉量が減って、熱が発生する量も減少してしまいます。すると体の中で熱が生まれにくくなり、内臓も冷えやすくなります」

生活のストレスによる自律神経の乱れ
2つ目に挙げられるのは、生活環境の激しい変化や不安からくる自律神経の乱れです。体を健康に保つ司令塔の役割を担っている自律神経は、機能がうまく働かなくなると、適切な熱が運ばれなくなり、内臓が冷えてしまうと山口さんは言います。
「コロナ禍での長期間にわたるストレスの蓄積や環境の変化が、さらなるストレスを生み出したことで、よりいっそう自律神経が乱れて、内臓が冷える危険性があるのです」
体重増や悪姿勢による血流の悪化
さらに山口さんは、3つ目に慣れない暮らしによる体形の乱れを挙げています。さきほどのコロナ禍での運動不足や、ストレス解消のためのドカ食いによって、太ってしまった人も多いでしょう。
「人間は体重が1kg増えると、毛細血管が1500m長くなると言われています。血液は新しく生まれた毛細血管にも流れていくことになるので、全体的な血流は悪くなり、内臓の冷えにつながる可能性が高くなります」
さらに、コロナ禍によってリモートワークになり、仕事をする環境が整っていない場所で長時間仕事をせざるを得なくなった人は、悪姿勢によって骨格が歪みがちです。

「骨格はどこかが歪んでしまうと、その部分をフォローしようとして、連鎖的にさまざまな骨格が歪みます。そして骨格がゆがむことによって、熱を運ぶ血管が圧迫され、血流が悪くなったり、神経が圧迫されたりして、自律神経が乱れる原因にもなるのです」
内臓の冷えを確認できるチェックリスト
体調不良の原因となる内臓の冷えは、手足が温かい、体温が高いからといって正常であるとはかぎらないと山口さんは言います。体温が正常でも6割程度の人は内臓が冷えており、自覚症状のない人も少なくないそうです。
そこで、まずは簡単なセルフチェックをしてみましょう。3つ以上当てはまった人は対処が必要で、数が多いほど内臓が冷えている可能性が高いです。
□顔のシミやくすみが気になる
□皮膚にかさつきがある
□唇がひび割れやすい
□足のむくみに悩まされている
□よく胃が痛くなる
□最近イライラすることが多くなった
□ストレスを感じやすい
□体がだるく疲れやすい
□肩こりや腰痛がひどい
□眠れない日や寝つきが悪い日が多い
□便秘が続いている
□手足がほてっている
□姿勢が悪いといわれる
□腹筋運動が1回もできない
□コーヒーやビールをよく飲む
内臓の冷えの改善法!かけるだけでOKのヒハツ
体調不良の原因となる内臓の冷えを改善するには、ヒハツという香辛料がおすすめだそう。山口さんが推奨する理由と、おすすめのレシピをご紹介します。
ヒハツが内臓温度を上げる理由
ヒハツはロングペッパー、ピパーチ、ヒバーチとも呼ばれるこしょうの一種で、こしょうと比べてよりピリッとした辛みとエスニックな香りがします。このヒハツに、内臓温度を上げる効果があるのだそうです。

「冷えた内臓を温めるには、まず体中に張り巡らされている毛細血管を元気にする必要があります。毛細血管は体の隅々まで熱を運んでくれる役割を持っていて、内臓もびっしりと毛細血管で覆われているからです」
この毛細血管は、極細であるがゆえに、劣化しやすく、壊れやすいというのが特徴。しかも加齢とともに衰える傾向があります。そのため、いかに毛細血管を丈夫に保つかが非常に大切だと山口さんは言います。ヒハツに多く含まれるピペリンという成分は、毛細血管を丈夫にする効果があるので、内臓までしっかりと熱が届くようになることが期待されるのだとか。
ヒハツの1日の摂取量の目安は1g程度でOK。小さじ1/2ほどの少量で十分だそうです。味噌汁やお茶にひと振り入れるのもいいですし、肉の下味に使うのも、臭み取りになるのでおすすめだといいます。ヒハツが手に入らない、体に合わないというときは、しょうがパウダーで代用してもよいそうです。
ヒハツを使った「内臓温めスープ」のレシピ

最後に、ヒハツとしょうがで内臓温度を上げる効果に加え、もち麦を使うことで満腹感があるためダイエットにもおすすめの「内臓温めスープ」のレシピを紹介します。
《材料》(2人分)
水…3と1/2カップ 乾燥きくらげ…2g もち麦…30g しょうが…1かけ かぶ…2個 かぶの葉…30g ヒハツ…小さじ1 鶏ガラの素…小さじ1/2 塩…小さじ1/3 醤油…小さじ1
《作り方》
【1】しょうがは千切り、かぶは4〜6等分、かぶの葉は3cm幅にカットする。
【2】鍋に水と乾燥きくらげ、もち麦を入れてひと煮立ちさせる。
【3】ひと煮立ちしたら、【1】とヒハツ、鶏ガラの素を入れて13〜15分程度中火で煮る。もち麦に火が通ったら、塩と醤油で味を調えて完成。
◆教えてくれたのは:理学博士、柔道整復師、鍼灸師、全国冷え症研究所所長・山口勝利さん

冷えを改善しながらやせる形状記憶ボディメイクサロン・シェイプロック銀座代表。30歳のときに構えた鍼灸の治療院で多くの患者を施術するなかで、体の冷えがあらゆる不調の原因となっていることに気づき、「全国冷え症研究所」を1998年に開所。今では、全国に400の分室を持ち、冷えに関する6万人のデータを持つ。「冷え」の怖さ、対処法を広めるべく、TVや雑誌などにも多数出演し、「冷え症」治療の第一人者として注目されている。https://www.ogino-hs.com/hiesyou/index.html
◆内科医・井上宏一さん
日本内科学会認定内科医、日本抗加齢医学会専門医、南砂町おだやかクリニック院長。2000年3月順天堂大学医学部卒業後は、一つの臓器だけを専門にするのではなく、人間の体全体を診ることができる医師を目標に、小児科医、内科医として、さまざまな病院で研さんを積む。現在、南砂町おだやかクリニック院長を務め「『健康=幸せ』の実現をサポートする医療」を掲げ、西洋医学にとらわれず、代替医療も取り入れた総合医療を目指している。