40代・50代になり、ダイエットの効果を感じにくくなる女性が大勢います。それは、この年代に「更年期特有の太りやすさ」があるからなのだそうです。漢方薬にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは、更年期のダイエットに地中海式の食事を提案します。さらに、あわせて取り入れたい漢方薬についても教えてもらいました。
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更年期に太りやすくなる原因
更年期は女性ホルモンの分泌が減少する影響で筋肉量が減り、基礎代謝や脂質代謝が低下します。つまり、今までと同じ量を食べていても脂肪をため込みやすい状態に変化しているのです。
また、更年期によくみられる睡眠の質の低下は食欲増加ホルモンの分泌を促し、食べ物の過剰摂取につながることもあります。
太りにくい体をつくる新習慣
中年太りを改善するための取り組みは、我慢せずに継続していけることが大切です。さらに、適度な運動を毎日行うことでダイエット効果が高まります。
地中海式ダイエット
米誌「USニューズ&ワールド・レポート」が発表したダイエット法ランキングで6年連続総合1位、植物由来ダイエット部門でも1位を獲得した地中海式ダイエットは、地中海沿岸地域での健康的な食事スタイルをベースにしたダイエット法です。
茨城キリスト教大学による論文では、イスラエルの施設においてBMI値が27以上の男女(40~65歳)322名を低脂肪食群・地中海食群・低炭水化物食群に分けて行った2年間の食事療法の研究結果が紹介されています。
・体重の平均減少量
低脂肪食群-2.9kg/地中海食群-4.4kg/低炭水化物食群-4.7kg
・血中脂質(悪玉コレステロール)
低脂肪食群-0.05mg/dL/地中海食群-5.6mg/dL/低炭水化物食群-3.0mg/dL
・トリグリセライド(中性脂肪)
低脂肪食群-2.8mg/dL/地中海食群-21.8mg/dL/低炭水化物食群-23.7mg/dL
数値だけでみれば低炭水化物食群の効果が高いように思えますが、その後の調査結果では、低炭水化物群は離脱率およびリバウンド率が高かったとしています。一方、地中海食群は、継続率が高くリバウンド率が少ないことが明らかになっているそうです。
地中海式の食事スタイルは、中性脂肪の減少効果のあるn-3系の多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食材を中心に摂取する点や、研究結果にもある通り継続しやすいという点において、ダイエットに取り入れやすい方法といえるでしょう。
地中海の食事スタイルを参考にした地中海式ダイエットは、食材によって摂っていい頻度が異なります。
具体的には、毎日食べるもの(野菜、果物、豆、ナッツ類、全粒粉を使った主食)、週に2回食べるもの(魚介類)、週に数回食べるもの(鶏肉、卵、チーズ、ヨーグルト)、月に数回食べるもの(牛肉、豚肉、菓子類)、そして、毎日の食事に使う調味料(ハーブ、スパイス、オリーブオイル)に分類されます。
全粒粉を使った主食には全粒粉パンなどが挙げられますが、「夕食はごはんが食べたい」という人は麦ごはんなどでも代用できます。
ポイントは、摂り過ぎると肥満や生活習慣病のリスクを高める飽和脂肪酸が多い牛肉や豚肉、菓子類を減らし、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などのn-3系の多価不飽和脂肪酸を豊富に含む魚介類などを代わりに摂取することです。
また、少量の赤ワインであればアルコールも許容としているので、家族や友人とコミュニケーションを取りながら時間をかけて地中海式の食事スタイルを楽しみましょう。食事の充足感を高めることが、地中海式の食事スタイルを取り入れたダイエットを継続するためのコツといえます。
なお、調理に使用するオリーブオイルは、酸度(脂肪酸の遊離度合い)が0.8%以下の品質が良いエクストラバージンオリーブオイルを選びましょう。オリーブオイルのなかには他の油と混ぜたものもあるため、成分表をチェックするなど購入時には注意が必要です。品質の高いオリーブオイルを選択することで、悪玉コレステロールを減らす作用があるオレイン酸などの栄養素を効果的に摂取しやすくします。
すべての食事を地中海式スタイルにしようとすると、継続が難しく感じられるかもしれません。まずは3食のうち1食を地中海式の食事スタイルにしてみたり、牛肉や豚肉で調理していた料理を鶏肉に置き換えたりするなど、できるところから始めて、慣れてきたら徐々に地中海式の食事スタイルを増やしていくとよいでしょう。
食欲増進ホルモン「グレリン」を過剰分泌させない
更年期は女性ホルモンの減少に連動して自律神経が乱れ、脳の睡眠をコントロールする領域に影響を与えます。そのため、寝つきが悪い、中途覚醒、早朝覚醒などが増える傾向にあります。また、ホットフラッシュや寝汗など、その他の更年期の症状もかさなり、睡眠の質が低下しやすくなります。
睡眠不足は食欲を制御する脳の領域に影響を与え、食欲抑制ホルモンの「レプチン」の分泌を妨げます。その結果、食欲増加ホルモンの「グレリン」の分泌が促進され、いつもと同じ食事量では満足できず食べ過ぎてしまう原因のひとつです。
食べ過ぎの原因に睡眠不足が疑われる場合は、自律神経のバランスを整え、睡眠の質を向上させることが大切です。それには、平日と休日を一定のリズムで過ごすことがポイントになります。
毎日の起床と就寝時間を一定にして規則正しい睡眠スケジュールを作ることで、自律神経が乱れにくくなります。休日に遅寝・遅起きをすると、睡眠サイクルが乱れて自律神経に影響する可能性があるので、休日もできる限り一定の起床・就寝リズムを保つようにしましょう。