
暑い季節になると、デリケートゾーンのかぶれやかゆみが気になることがあります。「蒸れが原因のこういった症状には、衣服の調整や塗り薬による対処と食事や漢方薬での体質改善といった、体の外側と内側の両面からのケアが有効です」と話す薬剤師の藤田佑莉さんに、効果的な方法について教えてもらいました。
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夏のデリケートゾーンにあらわれる症状と原因
汗によって下着内の蒸れが長時間続くと、皮膚の肥満細胞が刺激されてかゆみを引き起こす物質の「ヒスタミン」を分泌します。これが、血管や神経に働きかけることでかぶれやかゆみを引き起こし、ひどくなるとヒリヒリと痛みを伴うこともあります。
更年期はとくにデリケートゾーンにかゆみを引き起こしやすい年代といえます。それは更年期の女性は、突然ほてったり、必要以上に発汗したりする「ホットフラッシュ」が起こることがあり、そのせいで下着内が蒸れやすい状態になるためです。
デリケートゾーンの蒸れ・かゆみ対策
まずは、体の外側からデリケートゾーンの蒸れやかゆみにアプローチする方法を実践しましょう。
吸湿性・通気性のよいインナーや服装を心掛ける
デリケートゾーンを快適に保つためには、吸湿性や通気性のよい衣類を選ぶことが大切です。汗をかきやすい季節には、肌触りがよく吸湿性のある綿の下着や、通気性・速乾性に優れたリネンの服などを選ぶといいでしょう。
ポリエステルなどの化学繊維は通気性が悪く、蒸れやすい傾向にあります。人によっては化学繊維にアレルギーがあることに気づかず、それによってかゆみが生じている可能性もあります。

また、スキニーパンツやストッキングなど肌に密着する衣類は避け、通気性のよいゆったりとしたサイズのインナーや服を選ぶことも蒸れを防ぐことにつながります。
デリケートゾーンを清潔に心掛ける
デリケートゾーンの蒸れ・かゆみ対策には、汗や雑菌を洗い流し清潔に保つことも大切です。なお、デリケートゾーンの洗浄には、皮膚刺激の少ないデリケートゾーン専用の石鹸やボディーソープを使用することをおすすめします。
なぜならば、体とデリケートゾーンは、ph値(酸性かアルカリ性かをあらわす尺度)が異なるからです。デリケートゾーンは自浄作用を保つために、体よりもやや酸性にph値が傾いています。アルカリ性で作られることの多い体用の石鹸やボディーソープでは、デリケートゾーンには洗浄力が強すぎ、最適なph値が保ちにくくなります。そうなると、自浄作用を発揮する善玉菌まで殺しかねません。

デリケートゾーン専用の石鹸やボディーソープは、このph値を最適に保てる強さの洗浄力で作られているため、安心して使用できるものが多いです。また、デリケートゾーンの皮膚は体の皮膚に比べて薄いため、必要以上にゴシゴシと擦るのは禁物です。しっかり泡を立てて優しく洗うようにしましょう。
デリケートゾーンのかぶれ・かゆみに効果的な食材
デリケートゾーンのかぶれやかゆみの対策には、食事でアプローチする方法もあります。ヒスタミンによって引き起こされるかゆみを抑制したという報告がされている「アントシアニン」を豊富に含むブリーベリーを取り入れてみましょう。

6〜8月は国産ブルーベリーの旬となるため、生のブルーベリーも入手しやすいでしょう。また、冷凍ブルーベリーであれば1年中、コンビニやスーパーで購入が可能です。
アントシアニンはブルーベリーの皮に多く含まれているため、生のものはよく洗って皮ごと食べるようにしましょう。おやつとしてそのまま食べたり、ヨーグルトに入れたりと、手軽にとり入れられるのも魅力です。

また、30分以上加熱すると多くのアントシアニンが分解されるという報告があるため、ジャムなどにはせず、そのまま食べるのがよいでしょう。
デリケートゾーンの蒸れ・かゆみには漢方薬も役立つ
体の内側からアプローチする方法としては、デリケートゾーンのかゆみに効果が認められ、婦人科や皮膚科でも使われている漢方薬も有効です。
デリケートゾーンのかぶれやかゆみは体質も原因のひとつと考えられているため、「血流をよくして栄養をいきわたらせ、皮膚の新陳代謝を上げる」「湿熱を取り除き炎症を和らげる」といった働きのある漢方薬を選び、根本改善を目指します。

デリケートゾーンの蒸れ・かゆみにおすすめの漢方薬
・温経湯(うんけいとう)
更年期障害や月経困難症など、女性によく使用される漢方薬です。血流を改善して全身に栄養を行き渡らせることで、かゆみや湿疹に働きかけます。冷え症で手足がほてり、唇が乾燥しやすい人に用いられます。
・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
尿路や生殖器系の疾患によく使用される漢方薬で、陰部の熱を冷まして炎症を鎮め、デリケートゾーンのかゆみを軽減します。下腹部に熱感や痛みがある人に用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・藤田佑莉さん

ふじた・ゆうり。薬剤師。北里大学卒業後、産婦人科門前の調剤薬局で働く中で女性特有の不調に悩んでいる方が多いと実感したことから、漢方薬による根本治療の大切さを広めたいと考え「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)で薬剤師としてサポートを行う。