更年期の女性に多くみられる萎縮性膣炎。デリケートゾーンの不快感は相談しづらく、放置されているケースも多いようです。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは「萎縮性膣炎は、適切な治療と生活習慣の見直しで症状の改善が期待できる」と言います。そこで、自宅でできるセルフケアと意識したい栄養素、効果的な漢方薬について教えてもらいました。
* * *
萎縮性膣炎とは
萎縮性膣炎とは、膣や膣の周りが乾燥し、雑菌が繁殖することで起こる疾患です。
膣は、女性ホルモンのエストロゲンの働きで細胞の入れ替わりが促され、病原菌が入らない仕組みになっています。また、膣内の善玉菌が細胞内の糖を材料に乳酸を産生し、膣内を酸性に保つことで、他の菌の繁殖を防いでいます。
しかし、更年期でエストロゲンの分泌量が減ると、膣自体や膣内の善玉菌の働きが弱まり、乾燥し、雑菌が繁殖しやすくなります。そのため、更年期以降は萎縮性膣炎を発症する可能性が高まるのです。アメリカの家庭医学会(AAFP)の報告によると、閉経した女性の40%が経験しているというデータもあります。
萎縮性膣炎の症状
萎縮性膣炎の症状はデリケートゾーン全体に起こり、ヒリヒリする痛み、焼けるような違和感、かゆみ、黄色いおりもの、おりものの増加、おりもののニオイの変化、出血、乾燥感、性交痛などが代表的です。
ただし、子宮がんでも出血や黄色いおりものはみられるので、これらの症状がある場合は、自己判断せずに産婦人科を受診してください。
萎縮性膣炎のケア
萎縮性膣炎は薬による治療以外にも、デリケートゾーンを清潔に保ち、乾燥から守ることで不快感の軽減が期待できます。どんなケアをしたらいいのか、具体的な方法をご紹介します。
デリケートゾーン専用ソープを使う
雑菌の繁殖を防ぐためには、デリケートゾーンを常に清潔に保つ必要があります。しかし、洗浄力の強いせっけんやボディソープでは、洗いすぎによって乾燥に拍車がかかる懸念もあるため、デリケートゾーン専用ソープの使用をおすすめします。
デリケートゾーン専用ソープは、一般的なせっけんやボディソープよりも低刺激に作られていて、潤いを必要以上に落とさないので、乾燥対策にも役立ちます。
デリケートゾーンを保湿する
また、乾燥を防ぐために必要なのは、やはり保湿です。
手持ちの化粧水や乳液、オイルを使用してもよいですが、しみるなどの不快感があるようなら、デリケートゾーン専用の保湿剤もあります。病院でも処方してもらえるので、心配な場合は専門医に相談しましょう。
萎縮性膣炎のケアにおすすめの食材&栄養素
ビタミンEは萎縮性膣炎の回復に有効との報告があります。そこでおすすめしたい食材がニラです。
ニラは豊富なビタミンEのほか、抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、ビタミンCも含み、ストレスなどのダメージから細胞を守り、細胞の新陳代謝を助ける働きも期待できます。
ニラは1年に3回収穫されますが、春のニラはとくに柔らかく、香りが強いのが特徴です。肉や卵と合わせて炒め物にすれば主菜になりますし、サッとゆでてマヨネーズやごま油、塩などで和えて副菜にするのもいいでしょう。
ビタミンEを多く含む食品は、ニラ以外にも、かぼちゃ、しそ、ほうれん草、ツナ缶、メカジキ、ハマチなどがあります。脂溶性ビタミンであるビタミンEは、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。炒めたり、油を含む調味料を使用したりして調理するといいでしょう。