私はそもそもアイドルが大好きである。自分の魅力と輝きを自覚し、それを誰かを笑顔にするため放出する姿に尊さを感じずにはいられない。2010年頃は「アイドル戦国時代」と呼ばれ、女性アイドルグループが乱立状態で、AKB48、モーニング娘。などのハロプロ軍団などなど、いろんなグループからも元気をもらった。
ももいろクローバーZは、そのなかでも不思議なポジションで、奇抜な衣装、変わった曲と振り付けというトリッキーなアプローチながら、本人たちは王道の体育会系な一体感を持っていた。人数が少ないぶん、切磋琢磨というより、大人が立てた「無茶の壁」を、メンバー全員でスクラムを組み、体当たりで突破していくイメージ。

わけのわからない課題もたくさん出されていたが、『ワニとシャンプー」のように「ヤバイ!」といいながらも、ひたむきに解く姿はまさにエモーショナル! 紅白歌合戦にも出て、女性グループ初の国立競技場コンサートまで叶え……。
最近では、紫担当の高城れにさんが、プロ野球・中日ドラゴンズの宇佐見真吾選手と結婚。アイドルという職業柄、禁断ともいうべき「結婚しても活動継続」という難関を見事突破。モノノフ(ももいろクローバーZのファン)に祝福されている。
いやもう、まさに家族目線。これこそ、彼女たちが15年かけ、手に入れたホーム!
ももクロへの信頼は揺るぎない
一昔前まで、アイドルグループといえば短命で、あのピンクレディーも活動期間は約4年。平成に大ブームを起こしたSPEEDも約3年半だ。
アイドルにとって「どうやって大人になっていくのか」は、最大のテーマといえる。若い頃から輝けば輝くほど、切り替えが難しかった時代もあるけれど、今やアイドルも長命だ。その変化や加齢を「劣化」と片付けるなどナンセンス。年齢を重ねても眩しい笑顔でステージに立ち、たくさんたまったヒット曲も新曲も、ガツンと歌い踊る姿は間違いなく「進化」している。
ももクロが15年かけて向き合ってきた宿題は、夢の「達成」ではなく、さらにその「向こう側」を見ること。誰も観たことがない景色に、応援してくれる人全員を連れていくという、あまりにもスケールの大きいミッション! それを全力で、しかも笑顔で(舞台の裏ではたくさんの悔し涙もあったはずだけど)向き合ってきた彼女たちへの信用は揺るぎない。

しっかり者の最年少、あーりんはさらにプロ意識を更新。演出やプロデュース業にも進出している。しおりんは、甘えん坊のみんなの妹から、全体を見ることのできる最強のバランサーになった。夏菜子はこの先、エンタメ界のビッグプロジェクトの中枢を任されてもおかしくない風格すら出てきているし、れにちゃんは、純粋さと包容力を絶妙のバランスで保ち続けている。
個性くっきり、戦隊ヒロインのような超人的な強さだけでなく、母性をくすぐられるような隙も見せられる。多分、私は何年経っても、いくつになろうと、彼女たちを見れば自然と「うりゃおい!」と声が出てしまうだろう。もちろん、今も。うりゃおい!
ありがとう、ももクロ。おめでとう、ももクロ。15周年、何があってもテンション高め、疲れたときも一緒に「ヤバいよねー」笑ってくれるような、明るい歌声でいてくれて。
さあ、ガンガン聴いて、猛暑を乗り切ろう!
◆ライター・田中稲

1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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