41年ぶりのTHE ALFEE、ついに初出場のB’zも…「よし、今年も観るか紅白を」歌謡ライターが厳選する「第75回NHK紅白歌合戦」の見どころ・聴きどころ

大晦日の風物詩『NHK紅白歌合戦』の出場歌手が歌う曲目が発表された。デビュー50年にして2度目の出場となるTHE ALFEEをはじめ、南こうせつ、イルカなどベテラン勢の復活に加え、若手の初出場組も多数顔を揃える。なかでも大きなニュースとなったのがB’zの初出場だ。昭和歌謡や懐かしエンタメに詳しいライターの田中稲氏が、今年の紅白の見どころを探った。
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2024年ももう終わり。早い。今年こそ10年日記を書くと決めて、豪華な日記帳を買ってからもう1年経ったのか(買ったことに満足し全く書いてない)。ダイエットがうまくいかず、ジムでマジ泣きしてトレーナーの方を困惑させてから、もう半年経ったのか——。
紅白の情報や予想がポツリポツリと上がってくる10月末あたりから、「ああ、もうこんな時期か。時間が経つのは早いな」と、1年間のあれこれを振り返り始める。走馬灯のように思い出をめぐらせつつ、年末、紅白を観ながら食べる用の総菜やお菓子をネットで物色するのが、私の毎年の習慣である。
しかし実は今年は、紅白を見る、という定番の過ごし方から一度離れようかとも思っていた。テレビの前で過ごすのをやめてみよう。旅に出るのもいいなあ、と。
ところが、そんな私の心を察したのか(?)、紅白歌合戦が、秘策に出てきたのだ。そう、「復活組」の神投入である!

イルカ、南こうせつに「おかえりなさい」と言いたい
復活組とは、言わずもがな、紅白に久々に出る歌手のことである。中には数十年ぶり、平成を飛び越えての出場者もいる。もはや不死鳥の如く甦るというリスペクトを込め「フェニックス・アーティスト」と呼んでもいいだろう。
出場歌手が発表された日、私はあまりの素晴らしさに「おおぅ……」と感嘆のため息をついた。ここ数年の中で最も、私と同年齢くらいのオバハンオッサンに嬉しい人選ではないか。大声で言いたい。「おかえりなさい」と!
まず、イルカさんの『なごり雪』、南こうせつさんの『神田川』。まさか55歳になってこの2曲を紅白歌合戦で聴けるとは思わなかった。
『なごり雪』のリリースは1975年。小学生の時、先輩の卒業式で歌ったなあ。イルカさんの話しかけてくるような声がまた沁みるのよ。サビの「春が来て、君〜ぃは、きれいに〜ぃ、なった……♪」のところがいいのよ。センチメンタルを奥歯で噛みしめたくなるのよ!
『神田川』のリリースは1973年。50年以上昔の歌だが、日本全国の50代以上はほぼ全員、1番を歌詞カード無しで歌えるのではなかろうか。それほど浸透率がハンパない一曲だ。一声も聞き漏らすまいと耳を傾けたくなる南こうせつさん独特の“しんみり声”もいいし、イントロのギターも泣ける。
友人がギターを購入した際、「『禁じられた遊び』と『神田川』から取り掛かるわ!」と高らかに宣言していたっけ。そのうち、彼女からギターのギの字も話に出てこなくなったので、多分挫折したと思われるが、確かに弾きたくなる切ないメロディーである。
若者よ。これを聴いたあと、意味もなく24色のクレパスが欲しくなるので要注意だ!
サビはどうしても一緒に歌いたくなる高橋真梨子『for you…』
そして高橋真梨子さんも7年ぶりの出場だ。しかも曲目が『for you…』(1982年)である。危険。あまりにもデンジャラス! 真梨子様の甘い声に酔いつつも、サビはどうしても自分も歌いたくなるのが『for you…』の法則。
年末、ともに過ごす人の中に歌声自慢がいるなら、いきなり、箸もしくはお玉もしくはビール瓶をマイクがわりにし、「あなったがほし〜い〜!」と大絶唱すること間違いなしである。目の当たりにしても、驚くなかれ。『for you…』の魔力と受け止めよう。
しかし嬉しいなあ! あの艶やかな声が聴けるとなれば、日本酒やビールだけでなく、ワインも揃えておきたい。

とても福福しいGLAYとTHE ALFEEの紅白復帰
さて、アニバーサリーイヤーの今年、紅白復帰を遂げたのが活動30周年のGLAYと50周年のTHE ALFEEである。GLAYは1999年の『サバイバル』以来4度目の出場。今回の曲目は『誘惑』である。ぬおおビコーズアイラビュー!! 年末、おおいにGLAYのパワフルかつセクシーな音楽に誘われるまま溺れてみたい。
そしてTHE ALFEEは1983年の『メリーアン』以来、2度目の出場。曲目は『星空のディスタンス』。なんと41年ぶりのベイビーカンバーックならぬ紅白カンバーック!!
これはもう、41年ファンを楽しませ続けてきたという証である。控えめに言って奇跡。もうギラッギラ、きらめきまくりの演出で、唯一無二のハーモニーで会場を包み、さえぎる年末の夜を乗り越えディスタンスしてほしい!
GLAYとTHE ALFEEは、ヒット曲が数知れず、というだけでなく、メンバーがずっと仲良しという点でも、とても福福しい。2025年、いい空気を運んでくれそうだ。

2025年、良い年になりますように
2024年は、能登半島を襲った地震や豪雨災害をはじめ、けっして良い年とはいえない1年だった。特別枠の玉置浩二さんは、いろんな思いがあって、『悲しみにさよなら』を選曲したのではないだろうか。坂本冬美さんは『能登はいらんかいね』、石川さゆりさんも『能登半島』と、能登の名曲を歌う。きっと、歌だからこそ伝わる願いがある。
そして、この原稿を書いているまさに今、B’zがついに紅白初出場というニュースが流れてきた。来年2025年は、阪神大震災から30年。朝の連続テレビ小説『おむすび』の主題歌『イルミネーション』に、祈りを感じた人も多いだろう。

ベテランたちの歌声に「やっぱり長く愛されるには理由がある」と膝を打つだけではない。最近では、紅白で初めて観る、配信で人気の歌手も増えた。その瑞々しいパフォーマンスに「へえ、いい曲、いい声。チェックチェック」とメモを取るのも、すっかり習慣となっている。これはもう、ジャンルも年齢も混ざりに混ざったコンテンツだからこその醍醐味である。
よし、今年も観るか紅白を——。
過ぎゆく2024年にさよならをいい、2025年、良い年になりますように、と、願いを込めながら楽しみたい。
歌は世につれ、世は歌につれ。
巡り巡る時代を感じ、酔いましょう、歌声に。弾みましょう、歌声に!
◆ライター・田中稲

1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。近著『なぜ、沢田研二は許されるのか』(実業之日本社刊)が好評発売中。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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