健康・医療

更年期のホットフラッシュ、どう改善する? アンダーウェアや食材でできる対策

頬に手を当てる女性
ホットフラッシュの不快感を軽減するための下着選びや食事を紹介
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更年期女性のなかには、突然の熱感や発汗が起こる「ホットフラッシュ」と呼ばれる症状に悩む人がいます。管理栄養士の小原水月さんは、ホットフラッシュの不快感はアンダーウェアの選び方や食べものによって軽減が期待できるといいます。そこで、ホットフラッシュの原因やアンダーウェアの選び方、症状の緩和に役立つ食材や漢方薬について教えてもらいました。

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更年期に起こる「ホットフラッシュ」とは

更年期によくみられるホットフラッシュの症状は、「突然の発汗」、顔や頭、体が熱く感じる「ほてり」、頭がぼーっとしたり頭痛を感じたりする「のぼせ」、手足は冷たいのに上半身が熱く感じて発汗する「ひえのぼせ」などがあげられます。

ホットフラッシュの原因は自律神経の乱れと強いストレス

更年期は卵巣機能が低下して女性ホルモンが乱れ、それによって自律神経も乱れやすい時期。これがホットフラッシュの原因のひとつです。自律神経には血管の収縮・拡張を調節する働きがあるため、自律神経が乱れると体温調節がスムーズに行われにくくなるのです。

この自律神経の乱れには、強いストレスも関係しています。更年期にあたる45~55歳ごろは、仕事でリーダーに抜擢されたり、子供が就職や結婚をしたり、親の介護が必要になるなど、人間関係や生活環境に変化が生じやすい時期です。それに加えて、女性ホルモンの減少や乱れによって不調があらわれる「更年期障害」が重くのしかかり、心身ともに強いストレスを受けやすい状態にあるのです。

強いストレスのイメージ
抗ストレスホルモンが長時間分泌されることが自律神経の乱れにつながることも
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ストレスを受けると、脈拍や血圧を上昇させて体を興奮状態にして心身を守ろうと「アドレナリン」や「コルチゾール」といった抗ストレスホルモンが分泌されます。しかし、長期間ストレスがかかり続けるとこれらのホルモンが過剰分泌され、自律神経のバランスを乱すのです。

さらに、コルチゾールには女性ホルモンよりも優先して生成・分泌される性質があるため、女性ホルモンのバランスまで乱す原因となります。

リラックスする習慣がホットフラッシュ改善のカギ

つまり、日常生活のなかでストレスをため込まないように工夫することやリラックスする習慣を設けることが大切といえるでしょう。そのための方法について、紹介していきます。

心身をリラックスさせる入浴方法

自律神経にはアクティブを司る「交感神経」と、リラックスを司る「副交感神経」があり、入浴には副交感神経を活性化させる効果があります。

副交感神経を活性化させるには、38~40℃のぬるま湯に20分程度、半身浴をしてみましょう。ぬるま湯にすることでゆっくりと体を温め、半身浴にすることで足にたまった血液を水圧によって上へと戻す効果が期待できます。

アロマオイルとバスソルト
アロマを取り入れて半身浴をするのもストレス解消に有効
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香りには副交感神経を刺激する効果があるため、アロマオイルや入浴剤をプラスするのも効果的です。

なお、熱すぎたり、全身浴にしたりすると体に負担がかかり、交感神経を活性化させて体を興奮状態にしてしまうため、注意してください。

ホットフラッシュはアンダーウェアで対策する

また、ホットフラッシュの不快症状を緩和するには、アンダーウェアの選び方などもポイントになります。

アンダーウェアを意識すると得られる効果

アンダーウェアの機能や形状を意識することで、大量の発汗による汗じみや蒸れによるあせも、デリケートゾーンのかゆみ・かぶれ、汗が皮膚をつたわる不快感などを、軽減できる可能性があります。

とくに、汗じみは他人からの目線も気になるため、悩みの種になりやすくストレスの原因になることも。ストレスは先述した通り、ホットフラッシュをひどくさせる要因のひとつです。それでは、どんなアンダーウェアを選ぶのがよいのでしょうか?

グレーのキャミソールを着た女性
ホットフラッシュのストレスを軽減するアンダーウェアの選び方を指南
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ホットフラッシュの症状に適したアンダーウェアの選び方

ホットフラッシュの症状に適したアンダーウェアを選ぶには、4つのポイントがあります。

・汗じみ

脇の汗には、脇部分に汗取りパッドが付いているものを選びましょう。衣服の代わりに汗を吸収して汗じみを目立たなくできます。ブラジャーの上から着用するボレロ型の汗取りパッドは、より広範囲の脇の汗じみ対策に向いています。

太ももの汗じみには、太ももまで覆える2分丈のショーツを選んでみてください。

・におい

抗菌・防臭加工が施されているものを選ぶことで、においの対策ができます。

たんぱく質や脂質を含んだ、においのもとになる汗が分泌されやすい「アポクリン腺」は脇の下や乳首の周りなどの部位に多くあります。そのため、抗菌・防臭加工が施されているアンダーウェアであれば、雑菌の繁殖を抑え、においの発生を軽減することが期待できるのです。

・素材

生地は、触るとひんやりと感じる接触冷感素材や、吸水性や放湿性、通気性に優れる綿などを選びましょう。ホットフラッシュによる体温上昇を和らげることができるので、あせもやデリケートゾーンのかゆみ・かぶれなどの緩和が期待でき、快適な状態をキープできます。

・メーカー

さまざまなメーカーがありますが、更年期女性に向けて開発されたホットフラッシュ専用インナーが販売されています。

英国発のブランド「Become」の生地には、「アンチフラッシュテクノロジー(TM)」という技術が施されており、肌に触れるとひんやり感をもたらす冷感効果、突然の体温上昇による発汗を蒸発させる効果、肌表面の熱を吸収・放出しながら衣服内温度を調整する効果、抗菌加工による防臭効果など、ホットフラッシュ対策にうれしい機能が備わっています。

このようなポイントに着目して、自身が不快に思う症状を緩和できるアンダーウェアを選んでみてください。

ホットフラッシュの緩和に適した食材

ホットフラッシュの緩和には、「ビタミンC」が効果的です。ビタミンCにはコルチゾールの分泌量を調整する働きがあり、アスリートが運動後にビタミンCを補給したところ、コルチゾールの血中濃度が下がったという報告もあります。

ザルにのったピーマン
ビタミンCの摂取に有効なピーマン
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ビタミンCの補給には、夏が旬の「ピーマン」が安価で入手もしやすくおすすめです。なお、ピーマンのワタや種には、リラックス効果やストレスの緩和が期待できる「ピラジン」が含まれるため、捨てずに活用しましょう。

それには、ピーマンを半分に切ってワタや種ごと肉詰めにしたり、丸ごとじっくり弱火で焼いてレモン果汁や塩を振ったりする調理法を試してみてください。

ピーマンの肉詰め
ピーマンはできるだけ断面が少なくなる調理法がおすすめ
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ビタミンCは水に流れやすく酸化しやすい特徴があるため、先述した調理法のように丸ごと、もしくは断面を小さくしてビタミンCの流出や酸化を防ぐ工夫をしましょう。なお、調理後は酸化する前にすぐに食べるのがよいです。

ホットフラッシュの緩和に適した漢方薬

ホットフラッシュの緩和には漢方薬も有効です。漢方薬は自然由来の生薬が含まれていて比較的副作用が少ないうえ、服用するだけで効果が期待できるため、忙しい人でも気軽に続けられるメリットがあります。

ホルモンバランスや自律神経、血流の乱れなどがホットフラッシュの原因と考えられているため、「ホルモンバランスの乱れを整える」「自律神経を整えてこもった熱を発散する」「血流をよくして寒熱のアンバランスを解消する」といった働きのある生薬を含む漢方薬を選び、不快症状の根本にアプローチしましょう。

白い皿にのったさまざまな生薬
ホットフラッシュの緩和に役立つ漢方薬を紹介
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ホットフラッシュの緩和に役立つ漢方薬

・加味逍遙散(かみしょうようさん)

エネルギーや栄養の巡りを整えることで、更年期のホットフラッシュやひえのぼせ、神経の高ぶりや抑うつなどに用いられる漢方薬です。肩こりや便秘がある人に向いています。

→加味逍遙散について詳しく知る

・女神散(にょしんさん)

栄養の巡りを促すことで体の余分な熱を冷まし、女性ホルモンの乱れによる不調を改善する漢方薬です。のぼせやめまいなどがある人に用いられます。

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

小原水月さんの写真
管理栄養士の小原水月さん
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おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。

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