ペット・動物

犬が水を飲まなくなるのは体調が悪いときだけじゃない!理由や対処方法を獣医師が解説

水を飲む犬
犬が水を飲まなくなるのは体調が悪いときだけじゃない!理由や対処方法を獣医師が解説(Ph/イメージマート)
写真5枚

犬の体は60~80%が水でできているといいます。そして、体に必要な水分のほとんどを、犬は飲み水や食べ物から取り込んでいます。私たち人間と同様に、犬にとっても水は生命維持に欠かせないものです。しかし、飼っている犬が水を飲まなくなったら、どうしたらいいのでしょうか。獣医師の山本昌彦さんに聞きました。

ストレスや体調不良で飲水量が落ちることも

一般に、犬が1日に飲む水の量は、体重1kgにつき約40~60mlだといいます。体重8.5kgの柴犬なら500ml程度になる計算です。山本さんは、「飲水量は個体差があるので、平均よりちょっと多かったり少なかったりしても問題ないこともありますが、その子の普段の量と比べて増減があるときは注意するべきです」といいます。

犬はさまざまな理由で水を飲みたがらなくなることがあります。考えられる理由を、山本さんに挙げてもらいました。

・ストレス
・体調不良
・内臓疾患の症状の1つ
・痛いところがある
・水や環境が気に入らない
・水分が足りている
・冬だから
・老齢

「ストレスで食欲が落ちて、水もあまり飲まなくなる子がいます。胃腸が荒れて吐き気がするなど、ちょっとした体調不良の結果、水を飲まないこともありますね。内臓疾患が進行して、元気がなくなって水が飲めなくなることもありますが、その場合は、飲水量の変化に着目するまでもなく、飼い主さんが異変に気づいているだろうと思います」(山本さん・以下同)

やはり、心身の健康に問題が生じて、水を飲まなくなることがあるようです。

「水飲み場が嫌」「水分が足りている」など病気以外の理由も

体のどこかに痛みを抱えている場合も、水を飲まなくなる可能性があるといいます。

水を飲む犬
体のどこかに痛みを抱えている場合も、水を飲まなくなる可能性が(Ph/イメージマート)
写真5枚

「例えば、口内炎や歯周病で、口に水を含むと痛いだとか、椎間板ヘルニアや頸椎脱臼など、水を飲む姿勢を取ると痛いといった場合に、水を飲みたがらなくなることがありますね。あるいは骨折や関節炎、外傷などの場合、運動を控えるのでその分、喉が渇きにくくなったり。単純に、痛くて水飲み場に行くのがつらかったりもするでしょうね」

さらには、病気でもケガでもない理由で、水を飲みたいと感じないことがあるのだとか。

「与えられる水などに不満があって飲まないケースもあります。水飲み場が落ち着かない環境にあるとか、容器や水が汚いとかいったことです。シンプルに、ウェットフードなどから水分が摂取できていて、喉が渇いていない可能性もあります。
冬場に気温が低いので喉の渇きを感じず、気が付くと水分不足に陥ることもあります。それから、人間と同じように、犬も高齢になると運動量が減ったり、喉の渇きを感じる能力が低下したりして、飲水量が減ります」

獣医にかかるかどうか、様子見は長くて2日

このように、犬はさまざまな理由で水を飲まなくなるので、動物病院で診察してもらう必要があるのかどうか、判断に悩むところです。どう見極めるといいのでしょうか。

水を飲む犬
動物病院で診察してもらう必要があるのかどうかの見極めは?(Ph/イメージマート)
写真5枚

「まず元気があって、食欲もあって、ただ水を飲む量が落ちてしまったという場合には、1~2日は様子を見てもいいと思います。水を飲まない理由はわからないけれど、自然とまた飲むようになるという可能性があります。3日以上、飲水量が少ない場合は、元気そうに見えても、受診したほうがいいでしょう。

水を飲まないだけではなく、元気がない、食欲がない、嘔吐したなど、他の症状も現れている場合は、早めに動物病院を受診したいですね。飲まず食わずでは脱水症状を起こし、胃腸の働きも低下して、状態はどんどん悪くなる一方です」

水の器や温度、風味を変えてみる

愛犬に水を口にしてもらえるように、飼い主さんにも試せることがいくつかあります。

「水の飲ませ方を変えてみるといいかもしれません。例えば、水入れをシンプルなボウル形状のものから、高杯(たかつき)のように脚のあるタイプに変えてみる。台を使って高さを出す手もありますね。首が楽で、このほうが飲みやすいという子もいると思います」

水を飲む犬
水の器を変えてみて(Ph/イメージマート)
写真5枚

水の温度を工夫してみると喜ばれるかもしれません。

「飲み水の温度は、犬それぞれに好みがあるので、日頃の飲みっぷりを観察して、常温が好きか、冷たいのがいいのか、温かいのがいいのか、把握しておくといいですね。蛇口から直接飲みたがるような子は、蛇口が面白くてそうする可能性もありますが、冷たい新鮮な水が欲しいと思っている可能性もあります」

さらには、水そのものを変えてみるという方法も。

「成分や風味を変えてみる方法です。浄水器を通した水にするのもいいです。人間用のスポーツドリンクを3倍以上に薄めて与えてもよいですが、犬用のスポーツドリンクも販売されているので、そういうものを使うほうがベターです。ただし、人間用のミネラルウォーターを与えるのはやめましょう。犬にとってはミネラルが多すぎるので、尿石症などのリスクがあります。人間のスポーツドリンクをそのままの濃度で与えるのもやめてください。塩分や糖分が犬には過剰です」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

獣医師・山本昌彦さん
獣医師・山本昌彦さん
写真5枚

獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

●一般的になった「犬のサプリメント」、どんなときに与えるべき? 獣医師が解説

●かわいい犬や猫とのキスは“危険行為”!「気持ちはわかるけど、やめてください」と獣医師

→ペットの悩みに関する記事はコチラ

関連キーワード