ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)は一昨年10月、「卵巣がんの疑い」で手術を経験。その後、境界悪性腫瘍と診断された。そして今度は膵臓に「のう胞」が見つかった。その検査結果が出た日、オバ記者が向かった先とは――。
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「都バスに揺られる日にしよう」
「膵臓にのう胞があります」と定期検診で行った大学病院の婦人科で言われたのが昨年の暮れのこと。あれから約1か月、のう胞とがんの疑いをネットで調べまくったわよ。そうしている時もふと手を止めて「医師は“のう胞”と言っていたけれど、本当のところは…」と頭の上に暗雲が垂れ込め始める。まさに疑心暗鬼の塊だ。
それが先日、7分間でスパーッと消えた! 内科のM医師は、「1年前のMRI検査で6mmの影を発見して、その時にがんではないとハッキリしています。それから半年後のCT検査でものう胞は同じ大きさなので、あとはがん化の兆候を早く見つけるために半年ごとにMRI検査をした方がいいということです」と、理路整然。
これで胸のつかえがスパーンと消えた私は何をしたか。実は結果がどうであろうと、診察を終えたら都バスに揺られる日にしようと決めていたの。そうして来し方行く末をバスに身を任せながらじっくり考えようと、住まいのある秋葉原から「一日乗車券」(500円)で病院行きのバスに乗り込んだわけ。
病院は朝10時の予約だけど、一昨年からの通院で早めに行くに越したことはないということを覚えてね。この日も9時半には病院に到着している。で、病院を出たのが10時7分。さあ、バス旅の始まりだ!
30年以上前の泣き笑いが染みこんだ歌舞伎町
病院前から上野広小路まで2本目。そういえば朝から何も食べてない。上野駅広小路前の立ち食いそば『つるや』で海老天そば(550円)で温まり、上野公園から早稲田行きが3本め。終点まで約45分の予定だ。バスは不忍池のほとりから15年住んだなつかしい本駒込を通って音羽から鶴巻町。約30年前にこの近くで事務所を構えた日々を思い出したりしている間に終点の早稲田に到着。しかしバスから降りたらまあ、寒いのなんの! で、4本目は新宿駅西口と決めてすぐ近くのモスバーガーに飛び込んでコーヒー(280円)で温まった。
早稲田を出発したバスは高田馬場を通って明治通りをひた走り、歌舞伎町のキワを通ったら、ああ、ここは30歳の時に私が初めて事務所を構え、いろんな泣き笑いが染み込んだ町。って、センチメンタルジャーニーか?
いやいや、病院で「まだイケます」とハンコを押していただいた66歳。昔話なんかしている場合じゃない! で、5本目は未体験の新宿駅西口から品川駅までと決めた。で、結果的にこれが本日の大発見路線になったの。