
いつか見たい、行きたい場所…。旅行ジャーナリストの村田和子さんは、50歳になったときに行きたいリストを作り、「いつか」ではなく、行けるときに「行く」を決意したと言う。今回はその理由や、そんな中から絶景ハンター旅の模様を紹介してもらった。
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50歳になったときに、行きたい場所を書き出し、できるだけ時間を作り、行けるうちに行こうと決めました。理由の一つは子どもが大学に入り、子育てがひと段落したこと。特に自然が関与する絶景は、アクセスが大変なところも多く、期間限定や条件が整わないとみられないものもあります。自分の体力と年齢を考えると、「後回しにしている猶予はないぞ!」と思い一念発起したのです。
とはいっても長らくコロナでお休み状態。ようやく昨年から本格的に「絶景ハンター旅」の活動を再開しました。いざ絶景を目的に旅へ出かけると、タイミングがあわなかったり、期待が大きすぎて「あれ?」と思ったり、想定以上にアクセスが大変だったり。それもひっくるめて、旅の楽しみになっています。
今回は、私の絶景ハンター旅の模様と、これからのシーズンに狙いたい(狙っている)おすすめ絶景をご紹介します。
【1】《サガリバナ》夜に開花し朝には散る…一夜限りの幻の花は早朝に(沖縄県・西表島)
思い続けて早5年。「今年こそは!」と思いながら、期間が限られるため、仕事が入ったり、家の都合があったりで見送ってきたのが、沖縄県・西表島のサガリバナ。いよいよ2024年は実行に移すべく、訪れるべく準備をしています。サガリバナは夜に咲き始め、夜中に満開になり、早朝に花を落とすという儚い花で、「幻の花」や「一夜花(ひとよばな)」とも呼ばれます。バニラのような甘い香りも特徴だとか。

「いつかではなく今行く」と決めてしまえば、旅の優先順位があがり、2024年は「サガリバナを見に行く旅」に向けて早めに予定を確保しました。サガリバナの見ごろは6月下旬~7月いっぱい。今年もまだ間に合いますよ!

満開の様子を見る夜のツアーもありますが、今回私が選び予定しているのは、早朝5時起きで出発する「星野リゾート 西表島ホテル」のオプショナルツアー「絶景サガリバナクルーズ」。上から房にたわわに咲き誇るサガリバナと、散って水面に浮かんだサガリバナの両方をボートの上から楽しめるとのことで幻想的な絶景に期待が膨らみます。

体験した様子は、次回の絶景ハンター旅の報告、あるいはSNSなどで紹介予定です。気になるかたは、ぜひチェックしてみてくださいね。
ちなみに、遠く感じる西表島ですが、朝一番の羽田発石垣島行の飛行機で向かえば、お昼すぎには到着します。固有種が多い手つかずの自然は、「サガリバナ」だけではなく、四季折々の絶景の宝庫。夏にはトレッキングやマングローブのカヌー、あるいはエメラルドグリーンの海でシュノーケルをしながら、ダイナミックな自然の絶景を楽しめます。


■星野リゾート 西表島ホテル「絶景サガリバナクルーズ」 https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/iriomote/activities/13756/
(期間限定:2024年6月19日~25日、7月4日~10日、19日~24日)
【2】《水没林》雪解け水がしみだして森が湖に飲み込まれる!?(岩手県・錦秋湖)
冬に訪れ、春には水没林が見られるというのを知りGW明けに再訪したのが、岩手県錦秋湖。水没林とは、湖畔に立っている木が雪解け水で水没し、木が水面に浮かんでいるように見える不思議な風景。期待を胸に訪れてみると、なんとポスターなどに使われている撮影スポットは、現在大規模なトンネル工事中で、車両も多く撮影が難しい状況! ベストではないけれど撮影できたのがこちらの写真。


水位や天気などでも見え方はかわりそうですが…いかがでしょう? ちょっと「水没林」は写真でわかりにくいかもしれません。錦秋湖は訪れた5月は山々の新緑と水面に写る様子がとても美しく、水没林を抜きで考えても絶景でした。
夏場はカヌーなどから楽しむのもよさそうです。地元の人によると、断然おすすめは紅葉の秋とのこと。確かに山々が紅葉し水面に写る様は素晴らしいだろうなあと、行きたい絶景リストに新たな項目が加わりそう。
ちなみに錦秋湖大滝(貯砂ダム)が近くにあり、「滝の裏側を通れる」というのをガイドブックでみかけて足をのばしてみたのですが…。なんと、こちらも水没中でした。

夏場には錦秋湖大滝(貯砂ダム)はライトアップもされて、また違う景色が見られそうです。


そして今回、もう一か所、西和賀観光協会の方に水没林のスポットと聞いて訪れたのが、焼地台公園付近。

水面近くまでけるので、また錦秋湖とは違った神秘的な雰囲気が楽しめますよ。今期はシーズン終了ですが、来春ぜひでかけてみてはいかが?雪国では水没林は結構身近なようで、他にもスポットがあります。
■錦秋湖 水没林 (4月~5月:見えない年もあるので、観光協会などに確認してからお出かけがおすすめ)西和賀観光協会https://yamanoideyu.com/index.html
【3】《雲海》ダイナミックな太平洋産雲海に出会えたらラッキー!(北海道・トマム)
本州で雲海といえば秋に発生が多いですが、北海道のトマムでは、5月中旬から10月中旬という夏休みを含む長い期間、雲海を見ることができます。ゴンドラで簡単にアクセスができ、前日の午後には、雲海予報(発生率を予測)もあるので、より出会える確率があがります。

私が最初にトマムで雲海を見たのは、2010年のこと。3種類ある雲海のうち太平洋産雲海という一番ダイナミックで迫力があるものが発生し、今でもあの時の感動は忘れられません。しかもこの日に撮影した雲海は、見慣れているスタッフもビックリするくらい極上の雲海とあって、長くプロモーションにも使われていたほど。

その後も何度かチャレンジしていますが、2回は雷や荒天でゴンドラが動かず山頂にアクセスできず。そして再度2022年には、太平洋産雲海を見ることができました。進化した雲海テラスやCloud Walk(クラウドウォーク)の施設とともに満喫。見たら再度チャレンジしたくなる、見られなければリベンジしたくなるから不思議。気象条件が揃ったときに発生するので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。


■雲海テラス https://www.snowtomamu.jp/summer/unkai/ 2024年10月15日まで。雲海テラスへはゴンドラ(往復1900円)を利用
【4】《奇岩》京阪神からアクセス至便な六甲山にある絶景スポット!(兵庫県・芦屋)
我が家からも見える六甲山系にある「芦屋ロックガーデン」は、阪急芦屋川駅からアクセスできるロッククライミングの聖地ともいわれるスポット。写真のインパクトがすごいのに、意外と手軽に行けるという書き込みも複数あり、「本当に?」と半信半疑で出かけることに。
靴はトレッキングシューズを履き、「大変そうなら引き返す」つもりで、夫と大学生の息子を伴い出発。(※我が家は山登りやトレッキングの趣味はなく、たまに旅先でアクティビティに参加する程度で初心者です)
阪急芦屋川駅から素敵なお屋敷が続く坂道を25分ほど歩くと、芦屋ロックガーデンの入り口に到着。高座の滝を抜けると…岩場スタート。「いきなりか~!」と思いつつ手足を使って登り始めます。

最初こそ楽しんでいたのですが、頑張って相当登ったと思っても、案内標識を見ると、まだ上り行程の10分の1ほどしか進んでいません。先を考えると気が遠くなりましたが、岩場をくだるのは危険だし、人も結構多く引き返すこともできず。背水の陣で、休憩をしながらマイペースで進むことに。

無事にケガもなく目的地の標高447mの風吹岩へ到着。絶景を楽しみ、くだりは一般的な登山道ルートをこちらも休み休みくだり下界へ戻りました。

実は「万物相」という途中にある奇岩スポットが本来狙っていた絶景ポイントだったのですが、横にそれる道を見逃したようで今回は風吹岩でよしとすることに。終わってみれば全体で3時間ほどのルートで達成感もあり、苦労した分、感動も大きい。「今度は、万物相を見にまた行きたい」と思うほど。
ただし口コミにあるほど「初心者や子供でも手軽に…」という感じではなく(山登りをされているかたから見ると簡単なのかもしれませんが)、初心者には想定以上に大変で、後日見つけた公式資料にも中~上級者コースとの記載が。安全面の情報は主観的な口コミではなく、しっかり情報収集をする必要性があると改めて思ったのでした。
思い起こせば出発時、駅では、「六甲山へは、しっかりした装備ででかけてください」というチラシが配られていました。標高に関係なく準備や心構えは十分に、特に年齢的にも安全面には配慮が必要だと、絶景ハンター旅の教訓を得たプチトリップでした。
■芦屋ロックガーデン https://www.city.ashiya.lg.jp/citypromotion/rockgarden.html
※気候や天気の良い日を選び、装備をしっかりとお出かけください。初心者は訪れる人が多い土日などの方が道に迷う心配も少ない。
いかがでしたか? 旅へ出て絶景に出会うのもうれしいですが、自ら絶景を目的に旅に出るのは、違った達成感や思いもあります。また折を見て、気ままに絶景ハンター旅や、その他の行きたい旅リストの達成状況をご紹介します。お楽しみに。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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