がんや女性特有の疾患など、長生きするほど大きくなる「病気のリスク」について備えておく必要がある。そこで、「もしものとき」に慌てないよう検討しておきたい民間保険の考え方や選び方について、ファイナンシャルプランナーが指南する。
「早めの備え」と「公的制度とのW使い」で万全に
女性の場合、民間保険の加入者がもっとも多いのは50代で、実に87.8%もの人が何かしらの保険に加入している。だが、年を重ねるほど病気のリスクが上がり、それにつれて支払わなければならない保険料も高くなる上、加入の条件も厳しくなっていく。通院歴や既往歴だけでなく、服用している薬もすべて申告が求められることが多い。
保険はできる限り、保険料の安い若いうちから入っておくのがお得だ。
例えば、3大疾病保険金500万円の終身保険(65才払込満了)の場合、20才での加入では月々の保険料は1370円で、54才までの34年間の払込総額は503万4000円。配当金を含む解約時受取総額の目安は505万5000円となる。
一方、同じ保険に40才で加入すると、月々の保険料は5210円となり、34年間の払込総額は670万9000円。解約時受取総額の目安も679万5000円と大きくなるものの、同じ期間で払い込む保険料だけで比較すれば、20才から加入する方が約170万円も安くなるのだ。“もしもの事態”に受け取る保障額500万円が同じだと考えれば、可能な限り若いうちに加入しておきたいところだ。
実際、20代の女性でも6割近くが民間保険に加入しており、生命保険文化センターの調べでも、保険の新規加入者のうち30代が70.4%なのに対し、20代も40.3%と、少なくない割合が占めている。
ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんは「女性は高校卒業と同時に加入を検討してほしい」とアドバイスする。
「病気でなくとも、若い頃の方が活動的なので、旅行先やレジャーでけがをする可能性は中高年より高いほか、妊娠や出産で思いもよらない事態が起こる可能性もあります。2022年4月からは不妊治療も公的保険適用になっているので、それに該当する手術であれば、民間保険でも外来給付金を受け取ることができるなど、ライフステージに寄り添ったサポートがあります」
不測の事態に「本当に役に立つ」保険の選び方としては、支払いのスピードも大きなポイントとなる。
ファイナンシャルプランナーの牧野寿和さんが言う。
「どんなに保障額の大きい保険に入っていても、必要なときにすぐに保険金がおりなければ有効とは言いがたい。中には有料の診断書を提出しなければならない場合もあります。“加入から2年経過していれば、病院の領収書を添付するだけですぐに保険金が支払われる”など、スムーズな手続きができる保険を選びましょう」(牧野さん・以下同)
医療保険に終身の死亡保障をつけることもできる。一生を通して、何かあれば保険金が、何もなければ解約払戻金が受け取れるため“保障つきの資産形成”として、より安心して加入できるだろう。
「貯蓄性のある保険は、その分、月々の保険料は高くなります。毎月の払い込みに対してどれくらいの保険金や解約払戻金があるかチェックして判断しましょう」
公的介護保険は“現物支給”
「介護保険」も見逃せない。実は公的介護保険は“現物支給”のため、使い勝手がよくない場合も少なくないのだ。
「例えば、公的介護保険では要介護1なら月16万7650円分の介護サービスを受けられ、それを超える分は実費で支払うことになります」
また保険料の納付は40才からだが、40〜64才までの間は特定疾病を原因とする要介護状態でないと給付の対象にならず、事故やその他の病気で介助が必要な状態になっても給付を受けることはできない。
これに対し、民間の介護保険の中には、年齢に関係なく「身体障害1~3級」または「要介護2~5級」の状態になると、年金のほか、初期サポート保険金として100万円の一時金を受け取ることができるものもある。これより軽度な場合でも一時金50万円を受け取れるため、公的介護保険だけに頼るより安心度は高いはずだ。
「医療保険の中には“女性向け”と銘打ったものもあります。これは一般的な医療保険の保障内容に加えて女性特有の疾病に対する保障が上乗せされるもの。
その分、保険料は高くなりますが、大きな保障を受けられるので、がん家系の女性や過去に子宮のトラブルがあった人などは、女性向け医療保険を選ぶのも1つの手です」(大竹さん)
取材/小山内麗香
※女性セブン2024年8月22・29日号