健康・医療

《医学誌に論文掲載》脳にスプーン1本分のマイクロプラスチックが蓄積 脳に入り込む仕組みと与える影響について解説

脳のイメージ
病気とも関連するといわれるマイクロプラスチックとは(写真/PIXTA)
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人間の脳にスプーン1本分にあたるマイクロプラスチックが含まれている──。今年2月、世界的に権威のある医学誌『Nature Medicine』に衝撃的な論文が掲載された。

マイクロプラスチックは脳にもたまる!

マイクロプラスチックとは、ペットボトルやレジ袋などのプラスチック製品が紫外線や大気中の酸素により劣化し、微細化したもので、大きさが5mm以下のものをいう。さらに小さい1nm〜100nm、あるいは1nm〜1μmのものをナノプラスチックと呼ぶ。

これが大気中に拡散されるほか、川を通じて魚などに入り込み、われわれの体内にも侵入することが以前から指摘されていた。体内に入ったプラスチックは、基本的に0.1mmほどのものは便や尿などと一緒に排出されるが、それよりも小さいものは血管に入り込むとされる。その結果、ホルモンなどの内分泌系を乱し、ほかにも心臓発作や脳卒中などを引き起こす可能性があるといわれていた。

そんな中、冒頭の研究では、2016年と2024年に亡くなった52人のサンプルを分析し、臓器だけでなく脳にも蓄積することが明らかになった。プラスチックは心臓や腎臓より脳に多く蓄積し、その量はプラスチックスプーン1本分(7g)に相当したという。さらに認知症患者の脳内では、そうでない人と比べて高濃度のプラスチックが検出されたのだ。

マイクロプラスチックが脳にたまる理由

どうやって脳にまで入り込むのか。環境脳神経科学情報センターの木村―黒田純子さんが解説する。

「脳内の毛細血管には『血液脳関門』という仕組みがあり、毒物を脳内に入れにくくしています。しかし、脳内の血液中のナノ・マイクロプラスチックは血管壁に沈着し、微小なナノプラスチックは関門を通過して脳に入ると考えられます。また嗅覚経路を介し、鼻から脳に直接入る可能性もあります」(木村さん・以下同)

腎臓や肝臓よりも脳が高濃度だった原因は何か。

「脳内の血管壁に沈着したり、脳内に侵入したナノプラスチックは排出されにくいです。また、プラスチックは脂質と結合しやすく、脳は脂質が多い組織なので、ほかの臓器より蓄積された可能性が考えられます」

認知症の人の脳が高濃度だったとの結果も、見過ごせない事実だ。

「検体数が少ないのではっきり言えませんが、プラスチックの沈着したプラークによって脳内の血管が詰まり、『血管性認知症』を引き起こした可能性があります。さらに、脳内に侵入したプラスチックが脳内の免疫細胞を活性化させて毒性のある炎症物質を産生し、認知症の症状を悪化させることも考えられます。また、プラスチックに含まれる有害物質が脳内で溶出した可能性もあります」

認知症以外にも、脳梗塞や脳卒中、一過性脳虚血を引き起こす可能性もあるという。原因となるプラスチックを脳から追い出す方法はあるのだろうか。

「一度脳内の血管壁に沈着し、血管から脳内に侵入すると排出するのは非常に難しく、体内にできるだけナノ・マイクロプラスチックを入れないことが肝要です。発生源であるプラスチックの過剰使用をやめ、“元栓”を閉めるしかないのです」

放置すれば私たちの脳は蝕まれていく──。

※女性セブン2025年3月27日・4月3日号