
古今東西、家族関係の悩みはなくならず、とりわけ嫁姑問題は時代が変わってなお永遠だ。実際の事件を紐解くと、深い憎しみが、一線を越えてしまうことも──。
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肉やじゃがいも、にんじん、玉ねぎなどを炒めた、いいにおいが家中に広がっていた。その束の間、今度は血のにおいが充満し──。
事件は11年前、2014年10月の朝8時頃に起きた。5才と2才のやんちゃ盛りの息子たちの面倒を見る大森和子(仮名・33才)は台所に立ち、夕食のカレーの具材を煮込んでいた。まだルウは加えられていない。そこに現れたのは、同居していた73才の姑だった。
「事件発生前、次男の目が充血していることに気づいた姑が、病院に連れていくようにすすめました。しかし、和子が“眠たいから赤くなっているだけ”と応じたことから、口論になっていました。その後、腹を立てた姑はあろうことか和子が煮込んでいたカレー鍋の中身をいきなり流しにぶちまけたんです」(全国紙社会部記者)
すると、和子の怒りも爆発。両手で姑の首を絞めたかと思うと、まだ湯気をあげ、流しに転がる直径30cmのアルミ製の鍋を手にするやいなや「死んでしまえ!」と叫びながら姑の頭を何回も殴ったのだ。
傷口を押さえるバスタオルが真っ赤に染まり、姑は自ら119番し救急車を呼ぶと通報内容から事件性ありと判断され、警察官が出動。和子は殺人未遂容疑の現行犯で逮捕された。
姑は全治10日、頭を5針縫うけがと診断された。
現場は、東京都国分寺市の畑が点在する住宅街にある戸建て。最寄り駅から徒歩で20分以上、幹線道路からも離れている閑静なエリアだ。
和子は事件の5年ほど前に夫と結婚、アパート暮らしをしていたが3年前に舅が亡くなったのをきっかけに夫の実家で姑と同居を始めた。しかし、「嫁」と「姑」は日頃から衝突が絶えなかったという。
「“バカ”とか“アホ”という声が近所中に響き渡ることもあったそうで、姑は近隣住民に“(和子が)働きに出ればいいのに”など文句をたびたび言っていたそうです。姑が和子に対して“口の利き方がなっていない”などと言って、取っ組み合いのけんかを繰り返していたとも聞きました。姑は和子の料理にも文句を言っていたそうですが、今回の事件はカレーの味や具材の選び方などに不満があったわけではなく積年の思いがあふれたのでしょう」(前出・全国紙社会部記者)
事件後、姑はワイドショーに登場。痛々しい血のにじむガーゼ姿で出演し、「(カレーの具材を捨てたのは)頭にきたから。流しは片づけやすいでしょ」と飄々と語っている。当時、事件後の本誌取材に夫はこう漏らしていた。
「嫁姑の仲が悪いわけではなく、お互いに“瞬間湯沸かし器”なので、これまでも子供のことなどで口論になることはありました。女の人は年齢関係なく同じ土俵で勝負をするから…。
同じ環境で育ってきていない人間が、いきなり同じ屋根の下だもんな。おかあちゃん(妻)は、いままでよくがんばってくれた。おれがそれに甘えすぎちゃった部分があるんですよ」
※年齢は2014年の事件当時。
※女性セブン2025年9月22日・10月2日号